伊坂幸太郎目当てだったのですが、どれも素敵なお話ばかり。
恋愛小説で、こんなにもいいなぁと感じられたのは初めてです。
どこかユーモアがあって微笑ましくて、読んでいてハッピーになれる作品ばかりでした。
好きだ嫌いだの恋愛よりも、むしろ誰かしら登場人物の個性が光って感じられました。
だからこそ、恋愛小説を読まない私にしっくりきたのかもしれません。
白を貴重とした装丁も、明るくて爽やかで、作品の雰囲気にぴったりでした。
読み終わって気がつきましたが、全員男性作家なのですね。
それが爽やかさの主因かも?
伊坂幸太郎「透明ポーラーベア」
シロクマを筆頭とした蘊蓄や、ちょっとしたネタが収束する形式はいつも通りで、楽しめました。
恋愛はエッセンスでしかなく、作品の中心はお姉さんなんですよね。
現在にはいないのに、これだけ存在感があって、回りに影響も与える、強烈なお姉さん。
お姉さんと優樹の会話、「壁を見ているホッキョクグマ」から始まるフレーズに、伊坂幸太郎らしい粋さを感じました。
石田衣良「魔法のボタン」
こちらでの個性キャラは、萌枝。
男っぽいようなあっけらかんさと、微笑ましい可愛らしさがありました。
短くて、一気に駆け抜けるようなお話です。
市川拓司「卒業写真」
9年ぶりに偶然会った同級生・渡辺と、クラスにいた"もう一人の渡辺"の話をする。
だんだん明らかになる設定からして魅力的でした。
済ました表情でいながら、内心は動揺している木内のキャラクターも微笑ましかったし、彼女の視点だけでこれだけの状況を描き出す文章力に感嘆しました。
『今、会いにゆきます』にも興味が湧きました。
中田永一「百瀬、こっちを向いて」
こちらの個性キャラは、百瀬。
高校生にして既に確固たる自分を持ち、物怖じせず発言し、周りに振り回されずに突き進める意思もある。
髪も黒のまま、服装も規律違反はなし、アクセサリーすらつけていないのに、彼女は明らかに他の女子高生とは違った輝きを放っています。
中村航「突き抜けろ」
一風変わった木戸に振り回され、影響されつつ、坂本と大野が成長する。
この作品にいたっては、恋愛ではなく青春小説だと思うのですが。
飲んだくれながら木戸と坂本の3人であれこれ語るシーンは、大学時代にあった風景だなとしみじみ感じます。
本多孝好「sidewalk Talk」
離婚を前にした夫婦、と唯一恋愛小説らしい恋愛小説。
それでいてドロドロ重苦しいことはなく、ここまでの流れを途絶えさせることはありませんでした。
回想シーンの描き方が上手いですね。
硝子越しにキラキラ光る太陽の光みたいです。
Amazonのレビューは、こちらから。
Booklogのレビューは、こちらから。
【追記】
中田永一が乙一である、という噂があるということを知りました。
言われてみると、乙一っぽい作風ではあります。
この人のプロフィールだけ曖昧で、具体的な作品名を挙げていないのも妖しいです。
でも乙一とは合致しない部分もありますが。
高校卒業後から雑誌ライターとして活躍。2002年から編集者の薦めで小説を書き始める。03年、某雑誌にSF短編小説を別名義で掲載してデビューを飾る。その後、半年に一本の割合で短編・中編小説を発表。本作は初の恋愛小説となる。現在はライター活動をしながら、アニメ作品の脚本や映画脚本のリライト作業などを行っている。
しかし「乙一」というペンネームで発表して問題のある作品でもなく、別のペンネームにする必然性がどこにあるのか、その理由が思い当たりません。
みすらぼ日記さまによれば、
『I LOVE YOU』という短編集の中田永一は、実は『GOTH』や『ZOO』の作者なんだって。横浜西口の有隣堂のPOPに書いてありました。
とのこと。
確かにそういうPOPがあったとしたならば、有隣堂はどこで情報を得たのか。
またその情報には根拠があるのかも不明です。
噂の真偽が気になるところですね。
【追記】
噂のPOP全文です。
"中田永一氏"はご存じ「GOTH」「ZOO」の著者です(知ってた?)
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