カテゴリー「読書日記」の記事

2008.06.09

『いけちゃんとぼく』 西原理恵子

悲しくなると、小さくなって、増殖して。
暖まると、膨らんで。
チョコを食べると、チョコ色になって。

なんだか不思議な存在の"いけちゃん"と、"ぼく"の交流記。

悲しい別れがあったり。
つらい、悔しい経験があったり。
泣いて、笑って、遊んで。

いろんな経験をして、大きくなる"ぼく"。
人生の格言めいたこともあり、大人の絵本といったところです。

"いけちゃん"は、「不思議な存在」として終わるものだと思っていたので、正体が明かされて、びっくりです。
思わず、もう一度読み返してしまいました。

それなりにほんわかするんだけれど、評判ほどどっぷりは、ハマれなかったです。

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2008.04.16

『香菜里屋を知っていますか』 北森鴻

三軒茶屋にある、ビアバー香菜里屋。
出されるお酒はもちろんのこと、その日仕入れた旬の素材を、工藤が絶品に仕上げた料理が、魅力のお店です。

香菜里屋は狭い店内ですが、他の店では味わえない、素敵な時間を過ごすことができます。
お客さんが語った、ちょっとした謎に対して、工藤が「一つの見方」を提示してくれるのでした。

とにかくお酒や料理の描写が素敵で、うっとりするほど美味しそうです。
こんな素敵なお店で、自分も堪能してみたい、という気持ちになります。

ただ肝心の謎解きの部分で、一度もはっとさせられなかったのが残念です。

またネットで評判を聞いていたのですが、噂ほどハマることができず、戸惑い気味でした。

突然現れた登場人物に対して、特別な説明がないことがしばしば。
何もかもが「既知のこと」として進められ、蚊帳の外にいるような、違和感を感じたのです。

読了してから調べてみると、嫌な予感は的中。
これは、シリーズの第4作目でした。
最初から読んでいれば、また違った感想を抱いたのかもしれません。

まずは、第1作目を探してみようと思います。

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2008.04.14

『ストーリー&テリング』 松久淳 + 田中渉

小説を借りたつもりが、冒頭からいきなりの漫画からスタート。
絵門藤太の「女王のクリスマスを盗み出せ!!」は、冒険とユーモアが盛り込まれていて、面白そうな予感にわくわくしました。

が、本編の小説が始まってみると、がっくり。
やりたかったのは、喧嘩から始まるカップルのゴールインという、ハーレクインロマンスのようなラブコメなのでしょう。
けれどそこに、不必要な品のなさを盛り込んでいて、不快でした。

挿入されていく漫画は、最後まで面白かったけれど、もっと本編の小説も楽しい作品だったらよかったのにと、残念に思います。

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2008.04.07

『まほろ市の殺人 秋 闇雲A子と憂鬱刑事』 麻耶雄嵩

同じ架空の都市を使って、4人の作家が物語を描くという、企画モノ。
『まほろ市の殺人 春 無節操な死人』『まほろ市の殺人 夏 夏に散る花』に続いて、3作目。

真幌市で、連続殺人事件が発生。
真幌市在住のミステリー作家、闇雲A子が、事件解決に乗り出してきます。

彼女は過去にも、現実の事件についても、名探偵よろしく解決してきたとのこと。
今回は、冴えない刑事メランコこと、天城憂を助手に従えて・・・というお話。

11件もの連続殺人事件が起きている割には、真幌市に切迫感や恐怖感は、全然ありません。
むしろ犯人に振り回される警察と、猪突猛進な闇雲A子が、こっけいというか。

死体の横にあった小物の意味は、明かされて、それなりにはっとしました。
必然性がないというか、謎解きのための謎でありますが。

また犯行の動機が、いまひとつ説得力がなかったように思います。

喫茶店クルツの話題が出るなど、小ネタもあります。
せっかくシリーズにしているのだから、どの作品も、もっとたくさんこの手のネタを入れてもよいのでは、と思いました。

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2008.03.14

『まほろ市の殺人 夏 夏に散る花』 我孫子武丸

真幌市に住む作家・君村義一の元へ、初めてのファンレターが送られてきます。
しかも相手も、真幌市に住んでいるとのこと。

2作目の執筆に行き詰まっていたこともあり、四方田(よもだ)みずきとの、メールのやり取りがスタート。
ついに実際、みずきと会うことになり・・・というお話。

「幻想都市の四季」書き下ろし。
倉地淳の『まほろ市の殺人 春 無節操な死人』同様、架空の都市を舞台にしている、という企画を楽しむ本です。

見た目の薄さそのままで、あっという間に読めてしまう、軽い本でした。

ただし肝心の、四方田姉妹の書き分けが、全然できていませんでした。

接点が少ない上に、個性の書き分けがいまひとつ。
由来あってのこととはいえ、花の名前で似ているので、とっても紛らわしかったです。

個性の把握が重要なだけに、ストーリーそのものよりも、姉妹の判別に神経を使いました。

タクシーでの移動シーンがあったり、真幌市の雰囲気は楽しめたんですけれど。

余談。

途中、真幌市在住の闇雲A子なる推理作家が、地元のUHF局に登場します。
妙に具体的だったので、もしかして他の作品で登場する人物かな、と思いました。

調べてみましたが、次の秋に登場するようです。

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2008.02.01

『退職刑事1』 都築道夫

現役刑事の息子から、今手がけている事件の内容を聞き、退職した刑事である父が、真相を看破する。
アームチェア・ディテクティヴの短編集です。

事件が下世話というか、品がないというか、扇情的なものが多かったように思います。
短編集ですから、一つ二つくらい、そういう事件があってもいいかと思います。
が、9割がたその手の事件、というのは偏りすぎで、食傷気味でした。

もっと鮮やかに、スタイリッシュに、謎解きの妙を楽しめるような事件にはできないのかな、と残念に思いました。

書かれた時代が、そういう時代なのかもしれませんが。

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2008.01.22

『ひとりたび1年生』 たかぎなおこ

雪降る花巻温泉から、沖縄まで、ほのぼのとしたイラストで描かれる、旅エッセイ。
深夜バスに乗ったり、宿坊に泊まったり、ダイバーの資格を取得しに行ったりしています。

一人旅は初めてということで、チェックしていたお店に、なかなか一人で入れなかったり。
まずは、一人で行動することに慣れるところからスタート。

旅先でアンテナを広げ、いろんなことを見つけて、積極的に挑戦する、というものではありませんでした。
本来の目的だけ済ませる、のんびりまったりとした、短めの旅が多いです。

食べ物の話が多いものの、もう少し詳細な情報が欲しいような。
さらっと読めましたが、もう少し「おおっ」と感じるような内容が欲しかったです。

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2007.12.18

『クリック 佐藤雅彦 超・短編集』 佐藤雅彦

「だんご3兄弟」、湖池屋「ポリンキー」、NEC「バザールでござーる」、サントリー「ピコー」、「カローラⅡにのって」の作詞等、マルチな活躍を見せる、筆者。
独特のイラストと、独自の視点を持った、佐藤雅彦の短編集です。

頭の中のどこかのスイッチがカチッと音を立てる、そんな日常の瞬間を文字にしたもの。
短編集というので、小説かと思いましたが、一つの着想を芯にした、エッセイ的文章でした。

独特の数値を並べた「二ケタ飛ぶと変な気持ち」。
単位を変える「換算」。
『吾輩は猫である』を2ページに分けた「分離」。
面白いなと思う視点が、いくつかはあるものの、ものすごく衝撃を受けるものは、少なかったです。

『プチ哲学』のように、はっとさせられる切り口が、もっと欲しかったです。

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2007.11.26

『歴史をさわがせた女たち 外国篇』 永井路子

『歴史をさわがせた女たち 日本篇』の姉妹版ともいうべき作品。
ただし、ずいぶんと内容が落ちたな、という気がしました。

多くの人数を取り上げるため、一人一人に割くページ数が少ないのは、同じ条件ですが、考察が浅く、表面的なのです。

この項、○○氏の「○○」を参考にさせて頂いた。

という但し書きが象徴するように、他人の解釈を横流しにしているところが、気になります。
『戦国おんな絵巻』のように、自身で出典を読み込み、検証した深い考察とは、比べ物になりません。
諸外国の文献を、原文で読むのは困難なのは、仕方のないことかもしれませんが、引っかかりました。

そしてその割には、人物評がとても断定的なのです。
そこに根拠のなさ、上滑りな伝説なぞりに過ぎない、という印象を受けました。

ちょっと期待外れでした。

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2007.11.14

『ピタゴラBOOK ぴったりはまるの本』 佐藤雅彦+ユーフラテス

佐藤雅彦は、「ピタゴラスイッチ」の企画担当。
ユーフラテスは、彼の研修室の卒業生からなるグループで、「ピタゴラ装置」「フレーミー」「10本アニメ」などに携わっている面々。

彼らの提案する「新しいものの見方や、ひらめく力が培えるようなシリーズ」が、ピタゴラブックだそうです。

ページには、シンプルに何かのシルエットが描かれています。
添えられた文章から、そのアイテムが何であるかを推測。

思い当たるアイテムを家の中から持ってきて、重ねてみるとぴったりはまる、というものです。

「物事を別の角度から見る」発想の本で、確かに「ピタゴラスイッチ」に通じています。

読んですぐ分かってしまうものより、うーんと考えさせる問題の方が、面白いですね。

○が3つ並んだ「左から 1 2 3」。
○が2つ並んだ「これもなにかの穴です 左の10倍です」。

の二つが、シンプルだけれども、奥が深かったです。

紙に設置する面のシルエットだけに、分かりにくいというか、何とでも代替の効きそうな問題もありました。
答えを読んでも「あ、そうなのね」というだけに、終わってしまい、はっとする閃きが得られません。

ひねりがあって、はっとさせられる問題が、もっと多いと良かったです。

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2007.11.02

『最愛』 真保裕一

警察からかかってきた、一本の電話。
姉の千賀子が、重症で、危険な状態と聞き、病院へ飛んでいく悟郎。

小児科医の悟郎には、脳波の状態などから、千賀子の命が長く持たないことが、察せられます。

幼くして両親を亡くした悟郎と千賀子は、伯父と伯母、別々の家族に引き取られて育ちました。
ある時期から、没交渉だったため、彼女のことは何も分かりません。

千賀子のこと、そして事件のことを調べ始める悟郎ですが・・・・・・というお話。

重傷の火傷と、頭部の銃創。
前日に婚姻届を提出したという、謎の夫。

謎めいた冒頭から、どんな風に結末がつくのかと思っていたら、面白くなくてがっかりでした。
自己弁護がそこかしこにちらついて、不快感もありました。

特に後半。

正義のために戦う熱血漢と、暴走刑事は別物です。
弱い者を助け、信念を持ってまっすぐ生きる女性が、私文書偽造というのも、腑に落ちません。

小田切像も、千賀子像も、左右にぶれ続けます。
そのぶれに対して、主人公の述懐が、いちいちいい訳めいて感じられました。

仄めかされている「過去」も途中で察しがつき、悟郎の態度が、独りよがりで不快でした。
最後に選んだ手段も、理解できないです。

千賀子も、悟郎も、小田切も、伊吹も、誰にも共感できず、終わってしまいました。

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2007.10.22

『しずく』 西加奈子

頼れる女性にも、悩みがあったり。
さばさばとした女性と思われているけれど、背伸びしているのだったり。
嘘つき娘と思われているけれど、芯にはピュアな想いがあったり。

そんな女性の心を描いています。

どろっとした感情も、最後には浄化させてしまうような。
そんな終わり方が多い作品です。

ただ可もなく、不可もなく。
入り込んで、共感するところまではいけず。

そんな短編集でした。

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2007.10.14

『うちのパパが言うことには』 重松清

「小説家・重松清」らしい話は、あまりありませんでした。
タイトル通り、中学生と小学生の娘を持つ「父・重松清」が、感じたこと、考えたことをつづっているエッセイです。

「面白い!」「楽しい!」という本ではなかったですが、親業をしている後輩として、はっとさせられることが幾つかありました。

子供が、生まれて初めての今を生きているとしたら、親だって「生まれて初めての子育て」であるとか。

学校で押す「よくできました」のスタンプには、先生の期待に応えた、という欺瞞が感じられるとか。

子供にかかわる事件に関しても、被害者だけでなく、加害者の親が自分だったら、という検証があったり。

親業真っ只中の、いち父親としての考え方をつづっています。

吃音だった自分の体験を踏まえた内容、生活費を稼ぐためにルポライターをしていた時代のことなど、重松清という人の生い立ちや、今までを知ることができる内容ではありました。

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2007.10.03

『おしえて! gooの本 すずめのほっぺはなに色ですか?』 阿川佐和子編

すごくいい、というほどではないですが、予想していたよりは、面白かったです。

ポイントは、おしえて! gooのQ&Aを、ただ転載しただけの本ではなかったところ。

Q&Aは、ラジオの読者投稿のようなもので、あくまでネタフリ。
そのネタを元に、話を膨らませていくのが、パーソナリティーの面白さであり魅力です。

この本も、Q&Aに沿った内容で、もしくは大幅に飛躍しながら、阿川佐和子と編集者が、トークを繰り広げていきます。

名前と顔は分かるものの、出演しているテレビ番組を、ちゃんと見たことがない私。
阿川佐和子という人となりについて、あまり知らなかったのですが、さばさばとしていて、あっけらかんとした方ですね。
それなりに楽しく読むことができました。

おしえて! gooに関する本というよりは、阿川佐和子トーク集、といった感じです。

時折挿入される、フジモトマサルの4コマ漫画が、よかったです。
『ダンスがすんだ 猫の恋が終わるとき』の著者でもあります。

シニカルな要素を含みつつ、ゆるいトークを締めるようなアクセントになっています。

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2007.10.02

『こんな私も修行したい! 精神道入門』 小栗左多里

瞑想、写経、座禅、滝、断食、お遍路、内観。
さまざまな修行メニューに取り組む、エッセイ。

期待していたような、笑いはなく、物足りないです。

普段から妄想を広げて、漫画のネタにしているという著者。
雑念から解き放たれる、解脱とは、真逆の状態です。

宗教に入りたいわけではない、という筆者なので、宗教的喜びが混じっていない、冷静な体験談になっていると思います。

ただ、ストイックな修行は、どれもしっくりこなかった模様。
きついとか、つらいとか、そんな感想ばかりで、面白そうには感じられませんでした。

大変なエピソードも、ツッコミを入れて笑いに昇華できていれば、エッセイとして面白いのですが、そうでもなく。
「あー、つらそうだねー」と思うだけで、内容的に残念でした。

小さいころから、素晴らしいお坊様と、家族ぐるみの付き合いがあったという筆者。
「お坊様はかくあるべき」という理想が高く、解脱し切れていない坊さんに、厳しいダメだしをしていきます。

宗教には入りたくない、と冒頭で宣言していただけに、意外な一面を見ました。

ちょっとだけ興味がわいたのは、8章の「内観」。
自分が今まで、回りにしてもらったことを書き出し、それに対する感謝の念を新たにしていくというものです。

宗教色も薄く、感謝の気持ちを改めて持つ、という教えそのものも、納得がいく気がしました。

見ず知らずの赤の他人に、自分の生涯を分析して話す勇気が、なかなか出せそうになりですが。

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2007.10.01

『「私」をリセットする旅へ』 藤原美智子

ゴージャスな旅から、シンプルな旅。
仕事絡みから、プライベートなものまで、旅にまつわるエッセイ。

お洒落なことを書いているんだけど、全てが表面的で上滑りに感じました。
エッセイって、もっと人となりが表に出てくる、生身の文章だと思うのです。
その人を感じられる文章というか。

それがあまり感じられず、著者名が藤原美智子でも他の人でも、変わらないのではという気がしました。

無駄がなくて、生活感がなくて。
だけど魅力もあまりない、お洒落なショールームのようで、引き込まれませんでした。

写真が添えられていれば、また違っていたかもしれませんが。

旅に持っていく、小物と洋服の厳選の仕方は、ためになりました。
これこそ、写真が添えられていたらよかったのに、と思います。

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2007.09.07

『四国はどこまで入れ換え可能か』 佐藤雅彦

『ねっとのおやつ』を改題した本。
可愛らしいイラストで、ゆるい話を多く納めた、コミック集です。

『プチ哲学』のように、はっとさせられるような切り口、目から鱗のものの見方を期待していただけに、物足りなかったです。

「階段のデンキの秘密を明らかにしたい!」「Let's 錯覚!」のような話を、もっと読みたかったです。

まず開いてみて予想外だったのが、文章ではなく、漫画だったこと。

「ねっとのおやつ」は元々、ウィークディに毎日、ネット上で配信されたコンテンツです。
本書は、その絵コンテを元にしたものでした。

アニメーションが元だけに、一つの話のコマ数が多いです。
4コマ漫画に比べると、冗長で、説明がくどくどしい感じがしました。

無駄なコマが多いというか、もっとブラッシュアップできそうというか。

アニメーションで見るときは、これくらい説明があったほうがいいのかもしれませんが、漫画で見ると、推敲不足のように見えました。

現在「ピタゴラスイッチ」で放送されている、「フレーミー」のオリジナルが、本書に納められています。

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2007.09.06

『となりの姉妹』 長野まゆみ

すごく面白い、というほどではないものの、ちょっとした謎解きがしっくり収まっていくのは、気持ちよかったです。

亡くなった菊屋の奥方の持ち物から、「イッコちゃんえ」と書かれた封筒が見つかります。
中には、見知らぬ男のモノクロ写真。
男の正体と、封筒の意味を求めて、佐保と逸子は、調べ始めます。

一方、逸子が姉妹で住まう家は、二階を改装。
短期間契約の、貸し部屋にすることに。
そこには入れ替わり立ち代り、住人が引っ越してきて、ちょっとした事件が起きたりするのでした。

「領収書」と書かれた封筒の中には、預金通帳。
「ウワバミ」と書かれた罐の中に、銀行用の認印。

菊屋の奥方の謎かけは、ちょっとした日常の謎風で、面白かったです。

今までの長野まゆみ作品は、ぴりぴりと緊張感ある、親子関係が多かったように思います。

今回は、佐保の家族も、立彦兄の家族も、逸子姉妹も、ほのぼのとしたあたたかい家族です。
頑として髪を切ろうとしない、ショウマへの接し方も、微笑ましかったです。
なんだか、新境地を拓いた作品だな、と感じました。

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2007.08.31

『神様がくれた指』 佐藤多佳子

プロのスリ師、マッキーの目の前で、大事な"お母ちゃん"の財布が掏られた!
しかも相手は、ガキの集団。
マッキーは追跡するものの、中の一人にノックアウトされ、気絶寸前のところで、昼間に助けられます。

怪しげな昼間の部屋に居候しながら、犯人探しをするマッキーですが……というお話。

悪くはないんだけれど、さりとて入り込めるわけでもなく、といった感じ。

マッキーこと辻の、キャラクターが掴みきれなかったというのもあります。
咲との恋愛では、初心な中学生のようなところを見せたり。
一方で、ただ飲み屋に座っているだけで、一般のサラリーマンに、恐怖を与えるような存在でもあって。

怖い人間なのかそうでないのか、最後まで掴みかねました。

占い師マルチェラと、男性としての自分を使い分ける、昼間も漠然としています。
生活費もすってしまうようなギャンブラーでありながら、賭博狂のようなところもなく。

主役二人をどうも掴みきれないまま、進んでしまいました。

どうして最後に辻があのような申し出をするのか、という点にも、違和感を感じてしまいます。

プロのスリとして、ハルのスリの技を見たいという思いは、伏線があったので、突拍子もないものではありませんでした。
けれども、西方の大将や、咲などにした非道な振る舞いを考えると、やはり素直に頷けないものがありました。

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2007.08.27

『精霊の木』 上橋菜穂子

"守り人シリーズ"などを書いた、上橋菜穂子のデビュー作。
それなりの世界は作っているものの、いまひとつ入り込みにくかったです。

地球環境を破壊しつくした人類が、次に移り住んだのは、宇宙の星でした。
舞台は、その中の一つ、ナイラ星。
先住民のロシュナールが滅び、今は移民である人類だけが暮らしています。

ところがある日、リシアがロシュナールの持つ"力"に目覚め……というお話。

インディアンを伝える歴史の一方的さに始まる、先住民への横暴。
人類の絶えることない開発と、もたらされる環境破壊。
それらへの怒り、主義主張、諭したい、という思いが溢れすぎて、小説ではなく、道徳の教科書的な臭いが漂っています。

執筆の動機の根底に、そういった思いがあるのはいいのですが、それを小説に昇華し切れていない感じ。

舞台は、科学や医学が進歩した、未来。
緊急時信号発信装置、人間能力回復法制定など、妙に漢字が多いのも、読みにくさの一因でした。
言葉、というか漢字だけで、未来の世界を表現しようとしている無理があります。
もっと文章全体の表現で、未来らしさを表現しないと、イメージが見えてこないと思います。

多くの人物が登場しますが、それぞれの書き分けもいまひとつ。
『精霊の守り人』『闇の守り人』『夢の守り人』のような、冒頭から引き込まれるような文章にはなっていませんでした。

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2007.08.16

『ナイチンゲールの沈黙』 海堂尊

『チーム・バチスタの栄光』の続編。
更なるブラッシュアップを期待していましたが、期待外れでした。

東城大学医学部付属病院の小児科病棟には、難病を抱えた二人の少年がいました。
病名は、網膜芽腫(レティノブラストーマ)
彼らは、眼球を摘出しなければならないのです。

そんな子供たちのメンタル・ケアのため、田口の愚痴外来が、小児科向けとして開かれることになります。

その最中、子供のうちの一人、牧村瑞人の父が殺害されたとの報が入り……というお話。

前作は、オチが悪かったものの、そこまでの謎の引っ張り方は、なかなか魅力的でした。

ところが今回は、犯人も動機も推測可能で、魅力的な謎がありませんでした。
単純な事件に見せかけておいて、最後にどんでん返しがあるのかも、という淡い期待も、詠み終えて消え去りました。
ミステリ的な魅力は、全くなしです。

厚生労働省の変人・白鳥に、彼に勝るとも劣らない変人の旧友、警察庁の加納警視正が現れたり。
二人の間で、新たな次元の議論が繰り広げられたり。
高階病院長に、田口先生がやり込められ、貧乏くじを引かされたり。

前作同様の、キャラクターに拠った舌戦も、魅力的な謎がないと、単なる空回りに感じます。

前作では、田口と白鳥の聞き取り手法が、ストーリにマッチしていたから面白かったのです。
ベースとなる謎がないまま、ただ妙な聞き込みをしても、浮いてしまいます。

姫宮登場と聞いていましたが、結局表に出ないままだったのも、がっかりです。

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2007.07.18

『ゲド戦記4 帰還』 ル=グウィン

戦いを終え、魔法の力を使い果たし、空っぽになったゲド。
普通の男と結婚し、農家で子供を生み、普通のおばさんになったテナー。

エレス・アクベ腕輪を復活させた二人の再会と、再出発の物語。

暗く、ひどく、痛ましい出来事の描写があります。
それはテナーが引き取った娘、テヌーにまつわるもの。

テヌーになぜそのような過去を負わせなければならなかったのか、あまり必然性が感じられません。

そのため、前半は不快感があり、やや読みにくさがありました。

ハブナーに王が現れたり。
オジオンが亡くなったり。

世界が大きく変化する中での出来事です。

テヌーの変化や、カレシンの登場など、最後の方はまぁまぁの面白みだったものの、全体としてはいまひとつ。
読んでいて心地よいお話ではなかったです。

魔法の話も減るし、男女の物語みたいでした。

女は力を持たず、男のもの。
という議論にも、違和感を覚えました。

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2007.06.22

『ベルカ、吠えないのか?』 古川日出男

『このミステリーがすごい! 2006年版』国内7位。

最後まで世界に入り込めず、読むのが苦痛でした。

イヌよ、イヌよ、お前たちはどこにいる?

という冒頭の呼びかけに象徴されるように、犬への呼びかけが多いです。
それだけに留まらず、「オレハ……オレハいぬダ。」というように、犬の内面をつづった部分も多いです。

この独特の語り口が鼻について、読みにくかったです。

犬、特に軍用犬の血を通して、米ソの対立から現代までの歴史を描こうとしているのだろうけれど、イヌ一匹一匹の描写が浅く、思い入れができません。
時折現れる品のなさも、あまり必要性や効果が感じられず。

これから作ろうとしている歴史小説の構想を綴った、断片的なメモを読まされているような感じがしました。

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2006.12.25

『うそうそ』 畠中恵

「しゃばけ」シリーズ第5弾。
悪いとまでは言いませんが、期待はずれでした。

病弱な若だんなが、ついに長旅に初挑戦。
ところが、船出からトラブル続出。
湯治で健康になるどころか、平素より過酷な生活を強いられて...というお話。

遠出によってマンネリ化脱出を試みたのかもしれませんが、魅力がいまひとつ出し切れていませんでした。

お比女の一太郎への敵愾心が、説得力に欠けるし。
天狗と兄やの対決も、ご都合主義的なところがあるし。
前半の謎の提示は興味深かったですが、その解決に長編らしいパンチがないし。
お比女の成長や、天狗と兄やの心情の変化が重要なところですが、描写が浅くていまひとつ共感しきれず。

長さに見合った、魅力的な謎解きと盛り上がりがなかったです。

金次第で働く雲助の、新龍の精神的な逞しさは眩しかったですね。

それから、お菓子の取り合いで騒いだり、兄やたちに怒られたりだった鳴家。
この旅では、愛嬌満点でした。

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2006.12.07

『セリヌンティウスの舟』 石持浅海