カテゴリー「読書日記」の記事

2009.07.10

『流れ星が消えないうちに』 橋本紡

海外旅行先の事故で、不意に亡くなってしまった、加地。
加地を忘れられないまま、その友達の巧と付き合い始めた、奈緒子。

一方、仕事の関係で佐賀にいたはずの父が、「家出」してきて・・・というお話。

決して悪くはないんだけれど、すごく良いとも言えず。
微妙に入り込みきれませんでした。

というのも設定が、『九つの、物語』と同じで、無意識の内に比較してしまったから。

主人公が身近な人の死を、受け入れられていない大学生。
恋人との幸せを感じながらも、どこか危うさを抱えている。

本(今回は漫画も)の話を挟むところも、同じです。

今と高校時代の思い出をクロスさせながら、浮かび上がる加地くんは魅力的です。

死後1年も経たずに、巧と付き合い始めておきながら、今更悩んでいる感はぬぐえず。
巧が、サッカーにかこつけて行った行為も、共感できませんでした。

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2009.07.09

『私のパリ 私のフランス』 岸恵子

正直、内容のなさに、がっくりきました。

筆者は女優でありながら、結婚を機に仕事を辞め、パリへ移住。
離婚を経てもなお、パリに住んでいる、とのこと。

日本人が珍しかった頃から、パリに住んでいたのなら、それなりの話が聞けるのかと期待していたのに、まるでなし。
一応「フォト・エッセイ」の体裁にしたつもりのようですが、既刊の引用と、本人でないライターの文章が多すぎて、読む価値のある文章がほとんどないのです。

ファッション雑誌のワンコーナーのような、綺麗かもしれないけれど中身のない本。
元が「写真集」の企画だったというのが、頷ける内容でした。

またその本人の文章が、単なる身の上話になっており、はっきりいって興味が持てません。
エッセイですから、私的な話を書くのはいいのだけれど、あくまで「読み物」として仕上がっていなければならない、と思います。

お洒落なつもりの文章かもしれないけれど、上滑りでちっとも「パリ」が伝わってきません。

本人の写真は沢山掲載されているので、筆者のファンなら、写真集として楽しめるかもしれません。

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2009.07.04

『毒を食らわば』 ドロシー・L・セイヤーズ

『ベローナ・クラブの不愉快な事件』に続く、貴族探偵ウィムジィ卿シリーズ第5弾。

別れた男フィリップが、最後の会談の直後、体調を崩して死亡します。
解剖の結果、遺体から砒素が検出されたため、ハリエットは被告人となり・・・というお話。

ハリエットの魅力が何も分からないまま、冒頭で突然、ウィムジィ卿は恋に落ちます。
少なくとも読者には根拠が分からない、無罪であるという思い込みから始まる捜査。

友人が被疑者の一人であった前作で、努めて先入観を持たず、公平な目で調査に取り組んでいたのとは、正反対です。

なぜそこまでハリエットに魅せられ、また無実を確信しているのか、モチベーションに共感が出来ず、前半はやや入り込みにくかったです。

ウィムジィ卿の<僕の猫舎>の面々が、登場する辺りからは面白くなっていきます。

マーチスン嬢とクリンプスン嬢が、ご婦人方の噂話や、敵地への潜入から見つけ出す、数々の証拠。
名探偵が現地入りする、他の作品とは一味違った魅力です。

ただし違法な捜査が多く、証拠能力が疑問でした。

レディ・メアリとパーカー警部。
そしてウィムジィの恋。

恋愛に展開のあった話ではあります。

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2009.06.30

『ドロップ』 品川ヒロシ

書き手は、お笑いコンビ品川庄司の品川。
文章は上手く、読みやすいとは思いました。

喧嘩と友情、そして別れ。
セオリー通りといえばセオリー通りの、起承転結をつけた物語ではあります。

が、全てにおいて自己中心的で、激しい暴力と、下品さ。
一片の必然性もない、犯罪行為の繰り返しで、共感したり、応援したりする気持ちになれません。

映画化もされているようですが、映像で見たいとも思いません。

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2009.06.24

『NHKためしてガッテン 魚のすごいコツ+114レシピ』 NHK科学・環境番組部 季刊「NHKためしてガッテン」編集班

『NHKためしてガッテン 野菜のすごいコツ+102レシピ』の姉妹版。

野菜は、凄く簡単なことなんだけど、目から鱗が落ちるような方法が多かったです。
むしろ今までかけていた手間暇を省いて、よりよい調理法を提案するものでした。

今回の魚は、はっきり言って手間のかかる業が多いです。

例えば、かつおを家庭用コンロで直火で焼く方法。
確かに美味しいので、我が家でもやっていましたが、その後のコンロのお手入れは大変でした。

確かに栄養的にも味的にもよいのかもしれないけれど、ちょっと面倒な・・・と感じる方法が、正直多かったです。
そんなことを言っていたら、美味しい料理は作れないのかもしれませんけれど。

野菜同様、鮮度のよいものの見分け方、より美味しさを保つ保存法も紹介されていました。

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2009.06.16

『みんな自分がわからない』 ビートたけし

口述筆記したのではないかと思うような、喋り口調の文章でした。

ビートたけし自体は決して嫌いではないのだけれど、この本は最初から最後まで共感できませんでした。
というより、不愉快でした。

書かれたのは、バブルの終わりからバブル崩壊の頃。

お金を持っている若者が憎らしくてたまらないようで、文句ばかり言っています。
特に「女子供」を見下した表現が多く、自分よりいい思いをするなんて許せない、という感じ。
まるで「俺たちの若い頃は・・・」「それに比べて今の若い奴と来たら・・・」というオヤジの愚痴。

アメリカの猿真似なんてせず、日本らしさを持てといっておきながら、スポーツのことになると、アメリカ万歳、日本はダメだ、になる。

知識を手にしただけではだめで、体験が必要だといいながら、子供たちがやっている体験などは、本当の経験ではないなどと言う。

きちんとした芯が合って、読み手がはっとするような論理で「批評」するのではなく、単に僻みたっぷりの愚痴ばかりで、得るものがありませんでした。

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2009.06.10

『赤い月、廃駅の上に』 有栖川有栖

大の鉄道好きな筆者が、鉄道を共通のモチーフとした、短編集。

ちょっとぞくっとするようなホラー、生と死の境界をテーマにした話が多かったです。

巻末の初出によれば、怪談専門誌『幽』に連載された話が主体のよう。
だからぞくっとする話が多かったのですね。

じんとする「貴婦人にハンカチを」を除くと、やるせない死が多く、陰鬱で、あまり読後感もよくなかったです。
ホラーが好きな人にはよいかもしれませんが。

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2009.06.09

『スノーフレーク』 大崎梢

遺体は見つからなかったけれど、6年前に亡くなったはずの、速人。
東京への進学を前にした真乃の周りに、その速人に似た青年が現れた!
速人は生きているのかもしれない・・・というお話。

シーコや琴美は、程よい高校生なんだけれど、メインの二人が不自然でした。
勇麻も真乃も、どうも独りよがりで、ストーリー展開が甘ったるいのです。

恋愛の描き方が、あまり上手くないですね。

真乃も、控えめなんだか、積極的なんだか、キャラクターに一貫性がないように思いました。

ストーリー上、スノーフレークとスノードロップの区別が重要になります。
違いを強調しているようですが、今ひとつ伝わってきませんでした。

いろいろな事情が判明したところは、ちょっぴり切なかったです。

最後のオチは、確かに意外なカミングアウトでした。
が、あまり伏線がはっきりせず、それによって今まで読んできたものがひっくり返るような驚愕は得がたかったです。

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2009.06.08

『左近の桜』 長野まゆみ

桜蔵の家は、男同士が忍びあう、特殊な宿屋を営んでいます。
本人にはその気がないのに、常連客や、父、そして無自覚に拾ってしまった妖しと、絡み合っていく短編集。

筆者の作品の中で、ボーイズラブ路線が好きではないので、ハズレでした。
花や食器など、細々した物の描写は美しくて、好きなんですけれど。

読みやすくはあったので、さらっと読了は出来ました。

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2009.05.28

『深層』 朔立木

医療ミスを描いた「針」。
DVを描いた「スターバード・マーテル」。
援助交際を通した少女と先生を描いた「鏡」。
精神を病んだ家族を描いた「ディアローグ」。

4つのストーリーが納められた本。

どの主人公も身勝手で、全く共感できませんでした。

自己保身だったり、自己中心的な論理であったり。
どこかで反省して改善されることもなく、何を描きたかった話なのかよく分かりません。

主人公だけでなく、他の登場人物も酷いものでした。

最後まで不快感を抱きながらの読了でした。
救いがなく、後味の悪い本でした。

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2009.05.14

『裁判長! ここは懲役4年でどうですか』 北尾トロ

「裏モノJAPAN」の連載のため、全くの素人ながら、裁判の傍聴記を書くことになった筆者。
右も左も分からず、あれこれ傍聴しているうちに、その面白さにハマっていくというもの。

抽選になるような有名裁判の場面を、ニュース映像で見たことはあります。
しかし日常の裁判の仕組みと実情について、実はほとんど知らなかったなと感じました。

オウム裁判のように、有名どころの傍聴記もありますが、ほとんどは名も知れぬ事件です。

傍聴している人間がいれば、裁判官も検察官も弁護人も頑張るのだそう。
自己保身に走るあまり、無理な自己弁護で、空回りする被告人もいたり。

被告人と被害者だけでなく、証人、裁判関係者(裁判官・検察官・弁護士)にも、それぞれの事情がある。

そんな「人」が立ち回っている裁判というものが、描かれています。

筆者は中年男性のようで、主に夫だとか、加害者の男性に、感情移入して傍聴しています。
私は、女性の被害者に感情移入することが多く、筆者の興味本位な本音に、たまに不快感を感じました。

が、素人だからこそ、こういう好き勝手に感想が書けるのであり、そこが面白くもあるのでしょう。

見た目だけで「こいつ、やってるわ」と言い切ることは、報道では出来ません。
(一部マスコミは、裏付けなくデマを報道していることが、本書でも問題になっていましたが。)

この野次馬な感想に、不快感が上回る人には、お奨めできないです。

「部外者」だった一般の人が、裁判員制度の実施に伴い、「裁判関係者」の側に入ることがあります。
裁判員制度を導入して、民間の風を入れたほうがいいと、マニアは揃って言います。
民間の感覚を裁判に取り入れる、というのは、私もよいことだとは思います。

裁判員は、軽微な犯罪ではなく、死刑又は無期の懲役・禁錮に当たるような、重い事件を担当するのだとか。
陳述を聞いたり、証拠を見たりすることは、精神的にとても辛い作業になるのでは、と懸念します。
その辺りのメンタル的なケアは、どこまで行われるのだろうか心配です。

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2009.05.13

『恋文の技術』 森見登美彦

京都の大学から、能登の実験室に飛ばされた守田一郎。
肝心な実験も上手くいかず、友人や先輩、家族らに手紙を書きまくり・・・というお話。

新作ということで期待していたのですが、盛り上がりに欠けました。

地の文はなく、守田一郎の手紙のみで構成されています。

伏せられたり、歪められていたりする書簡を読み比べていくことで、「実際になにが起こったのか」が浮かび上がる仕組みです。

地の文がないというアイディアでは、恩田陸にも2作品あります。
全編がインタビュー形式の『Q&A』、インタビューの回答だけでつづった『ユージニア』です。

どちらも強い謎を核心に抱きながら、ぐいぐいと引っ張っていってくれる力があります。

本書の場合、あまり謎もなく、今ひとつピントの甘い作品でした。
同じエピソードについて、複数の手紙で繰り返すことにもなり、やや冗長でした。

終わりも劇的な何かがなく、なんとなくぼんやりとした読後感でした。

「第九話 伊吹奈津子さんへ 失敗書簡集」は、馬鹿馬鹿しさと自己つっこみに笑えるところがありました。

「4591108759」

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2009.05.08

『モダンタイムス』 伊坂幸太郎

漫画週刊誌「モーニング」の連載をまとめ、加筆訂正した作品。
安藤と潤也、詩織、そして政治家の犬養も登場し、『魔王』の後のストーリー。

全くもってつまらない、とまでは言わないのだけれど、格別面白いとも言えず。
厚みの割りには、満足度の高くない作品でした。

破天荒な、五反田正臣。
臆病な、大石倉之助。
そして、恐ろしい妻を持つ、主人公の渡辺。

システムエンジニアの彼らが、修正することになったプログラムには、奇妙な部分があるのです。
その部分を探るうち、関係者の身に危険が迫り・・・というお話。

読了後に唸ってしまうような、伏線の張り巡らされた、構想の素晴らしさ。
突拍子もなく思えるキャラクターや、意外な展開でありつつも、登場人物に上手い台詞を言わせ、「あるかも」と思わせてしまうストーリー力。

それら伊坂作品の魅力が、今回は欠けていました。

『ゴールデンスランバー』の書き下ろしと、同時進行の連載だったそう。
政治の強大な力と、それに一矢報いようとする一般人、という構図に、似たものを感じざるを得ません。

筆者自身もあとがきで触れていますが、作中の小説家が「井坂好太郎」なのは、内輪ネタっぽさが否めません。
ちらりと登場するだけならともかく、かなり長丁場で登場するキャラクターであり、別の名前にすべきだったと思います。

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2009.05.01

『一子とたぬきと指輪事件-新ほたる館物語』 あさのあつこ

老舗旅館「ほたる館」で起きた事件を描く、児童書。

旅館のことに、何でも興味津々の柳井くん。
控えめながら、しっかりと見ている、雪美ちゃん。
そして、思ったことはぽんぽんと言ってしまう、一子。

この三人が、お手伝いをしながら見た、ほたる館の事件とは・・・?

姑のおばあちゃんと、若女将のお母さん。
二人の丁々発止のやりとりは、ドロドロしたものがなくて、笑えてしまいます。

見た目は怖そうなのに、お母さんの尻に敷かれている、可愛いお父さん。
旅館のみんなが、愛すべき人なのです。

子供三人組も、シリーズものかしら、と思ってしまうくらいの、いいバランス。

代表作『バッテリー』は、悪くもないけれど、イマイチ入りきれず。
この作品は、子供向けの柔らかな口調で、読みやすかったです。

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2009.04.28

『The Book-jojo's bizarre adventure 4th another day』 乙一

由緒ある洋書のような、独特の装丁に心魅かれて、手にした本。

副題から分かるように、『ジョジョの奇妙な冒険・第四部』の設定を使った、小説。
イラストも、荒木飛呂彦です。

原作を読んだことがないので、どこまでが元設定で、どこからが乙一オリジナルなのか、判断が出来ませんでした。
調べてみると、東方仗助ら追っ手側の少年たちが、原作のキャラクターのようです。

その東方仗助らの性格が、乙一の作品として、自然なのには驚きでした。

死や、暴力に対して淡々としているところ。
感情の爆発があるようで、どこか最後の一線が冷静であるところ。

原作の設定があっても、ちゃんと乙一ワールドだと思いました。

そっけないタイトルに、最初は違和感を感じましたが、読み終えてみると意味が分かります。

原作を読んでいる人のほうが、より楽しめる作品だと思います。

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2009.04.22

『沈黙の函-鬼貫警部事件簿』 鮎川哲也

『蝋の鶯』の改題。

出張にでていた落水の生首が、ジュラルミンケースから発見された!
しかもその荷物の送り主は、落水自身であるという。

誰が、どうやって為し得た犯行なのか。
そしてその目的は・・・というお話。

冒頭のレコードコンサートによく現れていますが、全体を通じて、レコードの薀蓄が、よく描かれています。
そのため死体の発見が遅く、ましてや鬼貫警部の登場となると、最後の方になってしまいます。

筆者自身も、レコード収集が趣味ということで、ミステリが主眼というより、自身が好きな、音楽の世界を描きたかったのかな、とも。

犯人が誰であるかと、どの時点でレコードが生首と入れ替わったのかは、早くから見当がつきます。
が、そのトリックを説明するとなると、いい案が思い浮かばず。

最後に明かされたトリックは、派手さはないけれど、納得の行く着実な手段で、「ああ、その手があったか」と思いました。

舞台となったレコード店「楽々堂」には、しっかり者の女性店員が出てきます。
彼女に対する、他の人の反応の端々などに、昔の作品なのだなという、時代の違いを感じました。

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2009.04.08

『おでかけ手帖 TOKYO smile holiday』 平澤まりこ

いつもアンテナを張っていて、自分でプランを立てて、お出かけするのが大好きという筆者。
そんな平澤まりこ筆者が提案する、12ヶ月のお散歩プラン。

juneだったら「雨ふりカフェ」。
julyだったら「大人のカマクラ」。
augustだったら「東京ロマンティック洋館めぐり」。

月別に、ふさわしい場所とテーマを決めた、プランとなっています。

イラストと、手書きの文字でつづられたプランは、旅先から送られて来る、絵手紙のよう。

ただお洒落なんだけれど、琴線に触れるお店が、あまりなかったのは残念。
この方と私の、趣味が違うのだと思います。

それからせっかくのイラストなので、できれば全頁カラーで作って欲しいところです。

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2009.04.03

『晩夏に捧ぐ 成風堂書店事件メモ(出張編)』 大崎梢

元同僚の美保から、杏子に届いた一通の手紙。
彼女が勤める老舗書店「まるう堂」に、幽霊が出たのだという。
噂の名探偵・多絵を連れて助けにくるように、という指示に、信州まで出かけた二人ですが・・・というお話。

前作に比べると、正直トーンダウン。
つまらないとは言わないのですが、デビュー作ほどのパワーがありません。

実在の本に関する話題を散りばめながら、書店ならではの日常の謎を、さらりと解く。
そんなスタイルがよかったのです。
長編よりも、短編が合う作風ではないかと思います。

本書もそれなりに楽しかったのですが、最後まで引っ張るには、謎が弱く、冗長。
謎解き自体にも、つっこみたいところがありましたし。

次回作は、また短編集に戻るとのこと。
そちらに期待したいです。

あとがきで、ご自身が書店員であったこと。
『配達あかずきん 成風堂書店事件メモ』は出版を前提とせず、個人的に書いていた小説であったため、実在の本や出版社名が、数多出てくること。
などの裏事情が分かりました。

実際読んでいて、違う出版社の話題が出るのには驚きましたが、書店業界全体を描くという、独特なスタイルは貫いて欲しいです。

↓↓↓以下、ネタバレあります↓↓↓
部屋中に返り血が飛ぶような、凄惨な犯行。

ナイフの指紋は、タオルで包んで防いだといいますが、では服の血はどうしたのでしょう。
体は服で隠せますが、顔には返り血が飛ばなかったのでしょうか。
そういった物証を、警察から隠しおおせるのかどうか、疑問です。

素手で原稿を触るような状態であれば、ドアにも、他の物にも、指紋がついているはず。
古い事件とはいえ、そのくらいの捜査は行われてしかるべきでは、という疑問は残りました。

↑↑↑ネタバレ、終わり↑↑↑

この本について詳しく見る。
ブクログでチェック。

【2009.4.10 追記】
『サイン会はいかが? 成風堂書店事件メモ』読了しました。

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2009.04.02

『桜花を見た』 宇江佐真理

遠山景元の落し胤、葛飾北斎の娘、蛎崎波響、最上徳内。
実在の人物や、その関係者を描いた、時代小説。

読みやすいんだけれど、淡々としていて、どこか入り込みきれないところがありました。
史実をなぞるに留まっているというか。
その時その時の、主人公の感情を、もっと描ききってくれると、感情移入できたかも。

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2009.03.17

『いっちばん』 畠中恵

『しゃばけ』シリーズ第7弾。

つまらない、とまでは言わないけれど、面白いとも言えず。
今ひとつ満足感のない作品でした。
惰性で読んでいる感じ。

今回は、鳴家がやたらと、目に付きました。
妖が出てくるのは当たり前なのですが、鳴家の愛くるしいシーンを書いておけばいい、という姿勢が感じられて、引いてしまったのです。

鳴家は確かに可愛いです。
しかし、物語としての魅力があってこその、鳴家のシーン。
どの話も、謎としての魅力に欠けていて、物足りませんでした。

「ひなのちよがみ」と「いっぷく」の品比べは、まあまあでした。

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2009.03.11

『風の陰陽師 四 さすらい風』 三田村信行

シリーズ完結編。

多城丸の推薦で、平将門の元へ行くことになった、安倍晴明。
そこにまた藤原黒主が現れて・・・というお話。

タイトル先行で、内容は後付けで考えたシリーズだけあり、最後の方はどうも無理がありました。

『風の陰陽師 一 きつね童子』『風の陰陽師 二 ねむり姫』はよかったのですが、『風の陰陽師 三 うろつき鬼』で唐突さを感じるようになり、今回のラストの展開は、うーんと考えてしまいました。

物語だから史実と違ってもいいのだ、とあとがきにありますが、物語だからこそ、その必然性を描ききらなければいけないのでは。
入れ代わりがあったとするならば、それを仄めかすエピソードを、一つ二つあげるとか。

空想の翼を広げたというなら、物語世界での整合性や必然性が必要です。
でたらめと物語の違いは、そこにあるのでは。

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2009.01.30

『花の旅12カ月―今年こそ、花の町へ (Jガイドマガジン 2005年保存版関東版) 』 ムック

首都圏を中心に、花の名所を案内した冊子。

1月蝋梅、2月ストック・金盞花、3月梅、4月桜・チューリップ、5月ツツジ・藤、5月ラベンダー・花菖蒲・飛島萓草、7月向日葵、8月ムクゲ、9月萩、10月コスモス、11月紅葉、12月冬桜。

「お散歩写真部」の活動の参考にならないかと、借りてみました。

巻末の地図を見ると分かりますが、首都圏から日帰り旅行くらいの、ちょっぴり遠めの場所が多かったです。
タイトルにもあるように、「旅」向けのプランをまとめた本なのですね。

近くでぶらりと行けるところを探していたので、ちょっと目的とずれてしまいました。

12ヶ月の花紹介も、名所を一箇所しか取り上げてない月と、幾つか名所を取り上げている月があります。
1箇所しか紹介がないと、選択肢が狭まり、読者の住所によっては行きづらいことも。
毎回、複数取り上げて欲しかったです。

「電車で気軽に 西武沿線花さんぽ」は、交通手段を意識したコーナーでよかったです。
「小田急沿線」とか「京王沿線」なんてのもあるといいですね。

また「花ウォーク」では、春夏秋冬の季節ごとに、いくつかの名所をめぐるプランを提案。
食事や温泉など、花以外の魅力も含め、1日楽しめるコースが紹介されていました。

4月中旬、チューリップ・ツツジ、フジ、菜の花の、日比谷公園→皇居東御苑→北の丸公園コース。
6月上旬、紫陽花の、成就院→極楽坂切通し→御霊神社→長谷寺→光則寺コース。

この2つは、行ってみたいです。

この本について詳しく見る。
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2009.01.23

『ホームズのいない町 13のまだらな推理』 蒼井上鷹

ホームズとつくと、つい手を出してしまいます。
すごく悪いわけではないんだけれど、もう一声というところ。

ホームズのような名探偵がいない町では、登場人物が勝手に推理し、行動を起こします。
ショートショートのような短い話から、それなりの人数とページ数を使う話まで、内容はさまざまです。

一見バラバラのように思えた事件も、実は絡み合ってくるのが分かります。

別の話でチラッと登場した人物が、別の話ではメインになっていたり。
はたまた事件そのものにも、関連性があったり。

時系列ではないので、繋がりに気がつくと、自分でその時系列や関係性を再構築しなければいけません。

ホームズのパロディも含めていて、やりたいことは分かるのですが、今ひとつ文章がうまくない面も。
登場人物の書き分けが甘かったり、読み返さないと頭に入りにくい部分もありました。

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2009.01.08

2008年読了本Best15

2008年に読んだ本の中から、お奨め本を15冊ピックアップしてみました。

1.『果断 隠蔽捜査2』 今野敏
2.『一瞬の風になれ 第2部 ヨウイ』 佐藤多佳子
3.『ヒトラーの防具』 帚木蓬生
4.『警官の血』 佐々木譲
5.『加筆完全版 宣戦布告』麻生幾
6.『流星ワゴン』 重松清
7.『悶絶スパイラル』 三浦しをん
8.『有頂天家族』 森見登美彦
9.『神の守り人 帰還編』 上橋菜穂子
10.『ハリー・ポッターと死の秘宝』 J.K.ローリング
11.『弘海 息子が海に還る朝』 市川拓司
12.『阪急電車』 有川浩
13.『Rのつく月には気をつけよう』 石持浅海
14.『ゴールデンスランバー』 伊坂幸太郎
15.『復讐はお好き?』 カール・ハイアセン

毎年まとめられたらいいな、と来年の自分に向けて、呟いておく。

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2009.01.06

『天璋院と和宮』 植松三十里

篤姫の取り上げ方は少なく、どちらかというと、和宮寄りの小説でした。
読みやすかったものの、小説として何を伝えたかったのか、今ひとつ分からなかったです。

今回は、天璋院(篤姫)の境遇を、史実と異なる形で、より悲しいものにしています。
家定から嫌われ、家茂からも疎まれている、という部分です。

小説である以上、史実と異なる部分があるのは、仕方がないです。

資料がない部分を想像を膨らませてみたり。
もしくは判明していることでも、小説としての展開上、変える部分があったり。

それによって、確固たる人物像や主題というものを描くのが、小説だと思います。

史実から離れた描写の必要性を感じる「描きたい姿」がなければ、ただ史実を曲げただけの、勘違い作品になってしまいます。

今回は、史実から離れた割りに、描きたかった天璋院の姿、物語の芯というものが、感じられませんでした。

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2009.01.02

『おとぎ話の忘れ物』 小川洋子&樋上公美子

世界の忘れ物保管室に埋もれていた、物語たち。
[忘れ物図書室]を訪れる人たちだけが、読むことが出来るのですが・・・。

あとがきから察するに、樋上公美子の絵が先にあり、後から小川洋子が物語を描いたよう。

赤ずきんちゃん、不思議の国のアリス、人魚姫、白鳥の湖。
良く知られたおとぎ話をモチーフにしながら、どこかシュールで怖いストーリー。

スワンキャンディー〈湖の雫〉の紹介からして、最初は素敵な味なのに、最後は「蚕、鱗粉、たてがみ、羊水」。
どこか精神の均衡が外れたような、心の芯がヒヤッとするような要素が、ふんだんに盛り込まれていました。

世界中で忘れられた物語が読める図書館、という設定は面白かったのですが、物語と絵のブラックな質が、好みではありませんでした。

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2008.12.11

『大奥をゆるがせた七人の女 天璋院篤姫から絵島まで』 由良弥生

取り上げられているのは、天璋院篤姫、和宮、春日局、お万の方(家光側室)、お喜世の方(家継生母・月光院)、お琴の方(家慶側室・水野忠央の妹)。

きちんと出典を明らかにして、史実を紐解く、という姿勢がありません。

噂話や通説を寄せ集めただけの、ワイドショー的な切り口で、俗っぽかったです。
特に、男女の事に関する記述が下世話で品がなく、不快感がありました。

篤姫は冷酷な策略結婚だった、というけれど、当時の女性に、自由結婚などないでしょう。
家光の男色も、当時にはあった風習で、現代の感覚を以て批判するのは、的外れです。

そういった時代錯誤、「真実でなくても面白ければそればよい」という、ワイドショーか週刊誌か、と見紛う煽り方ばかりが、目に付きました。
なぜ天璋院篤姫が「大奥をゆるがせた」女になるのかも、謎ですし。

ただ大奥女中の役職とその役割は、今まで読んだ中で一番分かりやすかったです。

役職名の羅列か、プラス人数を書き添えることで、大奥というシステムがどの程度の規模であったか、を表すに留まっていることが多いです。

上臈御年寄は、最高位ではあるけれども、実務はあまり行わないとか。
御年寄は、実際に政務を行う、実力者であるとか。
それ以下の役職も、具体的にどのような仕事をしていたのかがまとめられており、分かりやすかったです。

また生母を中心とした、将軍の家系図も、実際の血のつながりがより分かりやすかったです。

どちらも巻頭にまとめてあるので、それだけ目を通せばよい気がする一冊でした。

和宮寄りで、天璋院の功績に対する評価が低いのも気になりました。

和宮が婚約を破棄させられたことばかりが取り上げられ、悲劇的に描かれています。
しかし家茂も、伏見宮貞教の妹・則子との縁談を中止にして、皇女降嫁に取り組んだことは、意外と語られないですね。

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2008.11.20

『ガラス張りの誘拐』 歌野晶午

娘の身代金は、現金で1億円!
しかもマスコミに逐一、状況を報道させた中での、身代金受け渡しを要求する犯人。

衆人環視の中、いかに犯人は出没するのか。
そして犯人の意図は、どこにあるのか・・・というお話。

悪くはないんだけれど、ミステリ的には穴が目に付きました。

主人公は、警察官の佐倉。
事件に巻き込まれて、妻を亡くしたため、被害者に上手く事情聴取が出来ない、という悩みを持っています。
事件を細かいところまで思い出させる、事情聴取の辛さを、身を持って知っているからです。

その特異な設定が、あまり活かしきれていないように思います。
聡明な養護教諭・松浦梨花と出会い、心を打ち明ける、きっかけに使われているだけのような気もします。

この問題を掘り下げて、ミステリ的にもいい展開を持たせられれば、もっと深い作品に仕上がったのでは、という気がします。

というのも、合同捜査本部の会話が、コメディタッチであったり、全体として軽い印象があったのです。
「超・本格ミステリー」と銘打っているものの、コメディ路線とどちらにしたいのか、掴みかねるところがありました。

事件の黒幕自体が、簡単に分かったこともあり、ミステリ的に粗が目に付きました。
もっと古い時代の作品ならともかく、1995年刊行ということで、警察がより高度になっている時代の事件としては、穴があると思います。

全くつまらなかったわけではないのですが、謎解きとして詰めが甘いかなと。

↓↓↓以下、ネタバレあります↓↓↓
犯人からの接触と思われる電話なのだから、通話記録は必ず警察がチェックするはず。
それが115からの折り返し電話だとしたら、真っ先に梨花が疑われてしかるべきです。


娘の声も、声紋鑑定くらいするのではないでしょうか。
その辺り、警察の捜査を、都合のいいように省いているように思えました。

↑↑↑ネタバレ、終わり↑↑↑

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2008.10.29

『現代京ことば訳 源氏物語 【一】桐壺-明石』 中井和子

形容詞が豊富で、自然に寄り添っていた、王朝時代の言葉たち。
そのニュアンスに近い「京ことば」にて、『源氏物語』を訳していこう、というシリーズ。

1991年刊の全3巻が全5巻になった新装版。
第1巻は、「桐壺」から「明石」まで。

柔らかな京ことばは、平安時代の雰囲気を、よりそのままの形で伝えられるのかもしれません。
確かに優美な世界を感じられる、雅な文章だとは思いました。

しかし原典に近いということは、主語なしで述語が続いていくという、『源氏物語』の分かりにくさも引き継ぐということ。

京ことばも同様に、幾重にもつぎ足し重ねて語る言葉ということで、主語なしの訳文が続いていきます。
京ことば自体に馴染みがなく、意味が分かりにくいこともあり、なかなか難解でした。

むしろ音読CDにしてしまった方が、良かったのかもしれません。

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2008.10.06

『女たちの幕末京都』 辻ミチ子

江戸幕府側の女性を描いた本は、それなりにあります。
大奥は、大奥を中心とした女性たちです。

今回の主役は、京都側の女性たち。
庭田嗣子、土御門藤子など、京都側の女性を、意図的に取り上げた本は、初めて触れる気がします。

梁川紅蘭、梅田信・千代、高畠式部、坂本龍、寺田屋登勢、松尾多勢子、木戸松子、税所敦子・・・。
あまり取りあえがれてこなかった女性が、多く登場します。

中でも特、にページを割かれているのは、近衛家の老女村岡です。

安政の大獄のことだけでなく、そのような政局になる前の、平和な時分の江戸下向の豪遊ぶりも、事細かに語られています。
どんな人々から、どのようなおもてなしを受けていたのか。
村岡の人脈が分かる内容となっています。

大河ドラマ「篤姫」にもあった、篤姫の輿入れに際し、村岡が江戸へ下向したエピソード。
日程的な問題と、出典不詳を理由として、否定されていたのが興味深かったです。
それぞれの研究者によって、違うものですね。

京都の女性を取り上げたといっても、女性の動きは政治に連動し、朝廷の政治は、江戸幕府と連動するもの。
どうしても男性側の描写が多くなり、思ったより女性に関する記述が少なかったのが、残念です。

また、原文ママでの引用が多いため、難解さがありました。
後半になればなるほど、意訳がつくことは少なく、難しい語句もありました。

また、歴史的な事実をただ羅列しているだけの、説明的な文章で、特に男性の記述にはそれが顕著でした。
読み物としては入り込みにくく、全体として読みにくかったです。

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2008.09.08

『岩倉具視 言葉の皮を剥ぎながら』 永井路子

結局、岩倉具視をどう描きたかったのか、がよく分からない作品でした。

最初に岩倉具視像をはっきりさせないので、ただ時系列にそって歴史をつづっているだけのように、感じられます。

根拠となる出典が少なく、主観的な人物評が、小説の地の文のように飛び出してきます。

筆者が彼のことを、どのように捉えているのか。
それを明らかにした上で、傍証となる出典の引用を踏まえながら、展開して欲しかったです。

あとがきにもありましたが「物書きの想像」の独りよがりになりがちで、これなら、いっそ小説という形にしたほうが良かったのでは、という気がします。

「攘夷派」と一くくりにまとめられがちな人々も、実は本当に「攘夷」を考えていたのではない。
時勢と、各々の思惑をつまびらかにし、その言葉の皮を剥いで、本質を捉える、というのが本書の意図のよう。

そういうコンセプトなので、岩倉具視を描こうという意図は弱く、エピソードの端役となっています。
タイトルに仰々しくつけておきながら、岩倉具視の話が細切れだったのも、しっくりこない要因の一つでした。

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2008.08.22

『とるにたらないものもの』 江國香織

シンプルでスタイリッシュ、という印象を受けるエッセイ。

点線で囲っただけの、シンプルな本文。
挿絵も、余計な装飾もない本文にも、その精神が表れています。

お洒落だけれど、深く共感することもなかったのが、残念。
でもさらりと読めました。

ただ「鉛筆とシャープペンシル」の章だけは、深く同意しました。

中学の頃だったか、「シャープペン禁止」という教師がいて、その授業だけは、鉛筆でノートを取ったことがあります。
削りたてはよいものの、書くうちに太くなっていく、鉛筆の線は美しくなく、とても嫌だった覚えがあります。

先の丸くなった鉛筆はだらしがないと思えたし、かといってとがりすぎは書きにくく、丁度いい状態は少ししかない。途中で字の太さが変わるのが嫌だった。

という筆者の意見には、強く頷きました。

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2008.08.03

『薬屋探偵妖綺談 銀の檻を溶かして』 高里椎奈

第11回メフィスト賞受賞作品。

舞台は、古ぼけた骨董品店のような内装の「深山木薬店」。
看板どおり、薬屋を営んでいるのが、表の顔。

そして裏の顔では、とある暗号を伝えた相手に対し、事件解決の依頼を受け付けるのでした。

しかも店員も、只者ではありません。
種族の違う、妖怪3人組が、人間の姿に化けて応対しているのでした、というお話。

冒頭の設定は悪くない感触だったのですが、読みすすめるにつれ、読み進むのが苦痛になってきました。

というのも、全体に、一人よがりな描写が、目に付くのです。

予測のつかない変人ぶりの中に、一段上から物事を見通せる、凄さを見せたいんだろう、とか。
美形だとかルックスの特徴を活かした、捜査の仕方を楽しませたいんだろう、とか。

やりたいことが見えるものの、それが表現し切れていないから回りに、突っ込みたくなってしまうのでした。

冒頭の、宇宙旅行が当たる推理クイズにも、かなり素人っぽさが溢れていて、嫌な予感はしていたのですが。

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2008.06.09

『いけちゃんとぼく』 西原理恵子

悲しくなると、小さくなって、増殖して。
暖まると、膨らんで。
チョコを食べると、チョコ色になって。

なんだか不思議な存在の"いけちゃん"と、"ぼく"の交流記。

悲しい別れがあったり。
つらい、悔しい経験があったり。
泣いて、笑って、遊んで。

いろんな経験をして、大きくなる"ぼく"。
人生の格言めいたこともあり、大人の絵本といったところです。

"いけちゃん"は、「不思議な存在」として終わるものだと思っていたので、正体が明かされて、びっくりです。
思わず、もう一度読み返してしまいました。

それなりにほんわかするんだけれど、評判ほどどっぷりは、ハマれなかったです。

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2008.04.16

『香菜里屋を知っていますか』 北森鴻

三軒茶屋にある、ビアバー香菜里屋。
出されるお酒はもちろんのこと、その日仕入れた旬の素材を、工藤が絶品に仕上げた料理が、魅力のお店です。

香菜里屋は狭い店内ですが、他の店では味わえない、素敵な時間を過ごすことができます。
お客さんが語った、ちょっとした謎に対して、工藤が「一つの見方」を提示してくれるのでした。

とにかくお酒や料理の描写が素敵で、うっとりするほど美味しそうです。
こんな素敵なお店で、自分も堪能してみたい、という気持ちになります。

ただ肝心の謎解きの部分で、一度もはっとさせられなかったのが残念です。

またネットで評判を聞いていたのですが、噂ほどハマることができず、戸惑い気味でした。

突然現れた登場人物に対して、特別な説明がないことがしばしば。
何もかもが「既知のこと」として進められ、蚊帳の外にいるような、違和感を感じたのです。

読了してから調べてみると、嫌な予感は的中。
これは、シリーズの第4作目でした。
最初から読んでいれば、また違った感想を抱いたのかもしれません。

まずは、第1作目を探してみようと思います。

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2008.04.14

『ストーリー&テリング』 松久淳 + 田中渉

小説を借りたつもりが、冒頭からいきなりの漫画からスタート。
絵門藤太の「女王のクリスマスを盗み出せ!!」は、冒険とユーモアが盛り込まれていて、面白そうな予感にわくわくしました。

が、本編の小説が始まってみると、がっくり。
やりたかったのは、喧嘩から始まるカップルのゴールインという、ハーレクインロマンスのようなラブコメなのでしょう。
けれどそこに、不必要な品のなさを盛り込んでいて、不快でした。

挿入されていく漫画は、最後まで面白かったけれど、もっと本編の小説も楽しい作品だったらよかったのにと、残念に思います。

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2008.04.07

『まほろ市の殺人 秋 闇雲A子と憂鬱刑事』 麻耶雄嵩

同じ架空の都市を使って、4人の作家が物語を描くという、企画モノ。
『まほろ市の殺人 春 無節操な死人』『まほろ市の殺人 夏 夏に散る花』に続いて、3作目。

真幌市で、連続殺人事件が発生。
真幌市在住のミステリー作家、闇雲A子が、事件解決に乗り出してきます。

彼女は過去にも、現実の事件についても、名探偵よろしく解決してきたとのこと。
今回は、冴えない刑事メランコこと、天城憂を助手に従えて・・・というお話。

11件もの連続殺人事件が起きている割には、真幌市に切迫感や恐怖感は、全然ありません。
むしろ犯人に振り回される警察と、猪突猛進な闇雲A子が、こっけいというか。

死体の横にあった小物の意味は、明かされて、それなりにはっとしました。
必然性がないというか、謎解きのための謎でありますが。

また犯行の動機が、いまひとつ説得力がなかったように思います。

喫茶店クルツの話題が出るなど、小ネタもあります。
せっかくシリーズにしているのだから、どの作品も、もっとたくさんこの手のネタを入れてもよいのでは、と思いました。

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2008.03.14

『まほろ市の殺人 夏 夏に散る花』 我孫子武丸

真幌市に住む作家・君村義一の元へ、初めてのファンレターが送られてきます。
しかも相手も、真幌市に住んでいるとのこと。

2作目の執筆に行き詰まっていたこともあり、四方田(よもだ)みずきとの、メールのやり取りがスタート。
ついに実際、みずきと会うことになり・・・というお話。

「幻想都市の四季」書き下ろし。
倉地淳の『まほろ市の殺人 春 無節操な死人』同様、架空の都市を舞台にしている、という企画を楽しむ本です。

見た目の薄さそのままで、あっという間に読めてしまう、軽い本でした。

ただし肝心の、四方田姉妹の書き分けが、全然できていませんでした。

接点が少ない上に、個性の書き分けがいまひとつ。
由来あってのこととはいえ、花の名前で似ているので、とっても紛らわしかったです。

個性の把握が重要なだけに、ストーリーそのものよりも、姉妹の判別に神経を使いました。

タクシーでの移動シーンがあったり、真幌市の雰囲気は楽しめたんですけれど。

余談。

途中、真幌市在住の闇雲A子なる推理作家が、地元のUHF局に登場します。
妙に具体的だったので、もしかして他の作品で登場する人物かな、と思いました。

調べてみましたが、次の秋に登場するようです。

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2008.02.01

『退職刑事1』 都築道夫

現役刑事の息子から、今手がけている事件の内容を聞き、退職した刑事である父が、真相を看破する。
アームチェア・ディテクティヴの短編集です。

事件が下世話というか、品がないというか、扇情的なものが多かったように思います。
短編集ですから、一つ二つくらい、そういう事件があってもいいかと思います。
が、9割がたその手の事件、というのは偏りすぎで、食傷気味でした。

もっと鮮やかに、スタイリッシュに、謎解きの妙を楽しめるような事件にはできないのかな、と残念に思いました。

書かれた時代が、そういう時代なのかもしれませんが。

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2008.01.22

『ひとりたび1年生』 たかぎなおこ

雪降る花巻温泉から、沖縄まで、ほのぼのとしたイラストで描かれる、旅エッセイ。
深夜バスに乗ったり、宿坊に泊まったり、ダイバーの資格を取得しに行ったりしています。

一人旅は初めてということで、チェックしていたお店に、なかなか一人で入れなかったり。
まずは、一人で行動することに慣れるところからスタート。

旅先でアンテナを広げ、いろんなことを見つけて、積極的に挑戦する、というものではありませんでした。
本来の目的だけ済ませる、のんびりまったりとした、短めの旅が多いです。

食べ物の話が多いものの、もう少し詳細な情報が欲しいような。
さらっと読めましたが、もう少し「おおっ」と感じるような内容が欲しかったです。

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2007.12.18

『クリック 佐藤雅彦 超・短編集』 佐藤雅彦

「だんご3兄弟」、湖池屋「ポリンキー」、NEC「バザールでござーる」、サントリー「ピコー」、「カローラⅡにのって」の作詞等、マルチな活躍を見せる、筆者。
独特のイラストと、独自の視点を持った、佐藤雅彦の短編集です。

頭の中のどこかのスイッチがカチッと音を立てる、そんな日常の瞬間を文字にしたもの。
短編集というので、小説かと思いましたが、一つの着想を芯にした、エッセイ的文章でした。

独特の数値を並べた「二ケタ飛ぶと変な気持ち」。
単位を変える「換算」。
『吾輩は猫である』を2ページに分けた「分離」。
面白いなと思う視点が、いくつかはあるものの、ものすごく衝撃を受けるものは、少なかったです。

『プチ哲学』のように、はっとさせられる切り口が、もっと欲しかったです。

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2007.11.26

『歴史をさわがせた女たち 外国篇』 永井路子

『歴史をさわがせた女たち 日本篇』の姉妹版ともいうべき作品。
ただし、ずいぶんと内容が落ちたな、という気がしました。

多くの人数を取り上げるため、一人一人に割くページ数が少ないのは、同じ条件ですが、考察が浅く、表面的なのです。

この項、○○氏の「○○」を参考にさせて頂いた。

という但し書きが象徴するように、他人の解釈を横流しにしているところが、気になります。
『戦国おんな絵巻』のように、自身で出典を読み込み、検証した深い考察とは、比べ物になりません。
諸外国の文献を、原文で読むのは困難なのは、仕方のないことかもしれませんが、引っかかりました。

そしてその割には、人物評がとても断定的なのです。
そこに根拠のなさ、上滑りな伝説なぞりに過ぎない、という印象を受けました。

ちょっと期待外れでした。

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2007.11.14

『ピタゴラBOOK ぴったりはまるの本』 佐藤雅彦+ユーフラテス

佐藤雅彦は、「ピタゴラスイッチ」の企画担当。
ユーフラテスは、彼の研修室の卒業生からなるグループで、「ピタゴラ装置」「フレーミー」「10本アニメ」などに携わっている面々。

彼らの提案する「新しいものの見方や、ひらめく力が培えるようなシリーズ」が、ピタゴラブックだそうです。

ページには、シンプルに何かのシルエットが描かれています。
添えられた文章から、そのアイテムが何であるかを推測。

思い当たるアイテムを家の中から持ってきて、重ねてみるとぴったりはまる、というものです。

「物事を別の角度から見る」発想の本で、確かに「ピタゴラスイッチ」に通じています。

読んですぐ分かってしまうものより、うーんと考えさせる問題の方が、面白いですね。

○が3つ並んだ「左から 1 2 3」。
○が2つ並んだ「これもなにかの穴です 左の10倍です」。

の二つが、シンプルだけれども、奥が深かったです。

紙に設置する面のシルエットだけに、分かりにくいというか、何とでも代替の効きそうな問題もありました。
答えを読んでも「あ、そうなのね」というだけに、終わってしまい、はっとする閃きが得られません。

ひねりがあって、はっとさせられる問題が、もっと多いと良かったです。

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2007.11.02

『最愛』 真保裕一

警察からかかってきた、一本の電話。
姉の千賀子が、重症で、危険な状態と聞き、病院へ飛んでいく悟郎。

小児科医の悟郎には、脳波の状態などから、千賀子の命が長く持たないことが、察せられます。

幼くして両親を亡くした悟郎と千賀子は、伯父と伯母、別々の家族に引き取られて育ちました。
ある時期から、没交渉だったため、彼女のことは何も分かりません。

千賀子のこと、そして事件のことを調べ始める悟郎ですが・・・・・・というお話。

重傷の火傷と、頭部の銃創。
前日に婚姻届を提出したという、謎の夫。

謎めいた冒頭から、どんな風に結末がつくのかと思っていたら、面白くなくてがっかりでした。
自己弁護がそこかしこにちらついて、不快感もありました。

特に後半。

正義のために戦う熱血漢と、暴走刑事は別物です。
弱い者を助け、信念を持ってまっすぐ生きる女性が、私文書偽造というのも、腑に落ちません。

小田切像も、千賀子像も、左右にぶれ続けます。
そのぶれに対して、主人公の述懐が、いちいちいい訳めいて感じられました。

仄めかされている「過去」も途中で察しがつき、悟郎の態度が、独りよがりで不快でした。
最後に選んだ手段も、理解できないです。

千賀子も、悟郎も、小田切も、伊吹も、誰にも共感できず、終わってしまいました。

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2007.10.22

『しずく』 西加奈子

頼れる女性にも、悩みがあったり。
さばさばとした女性と思われているけれど、背伸びしているのだったり。
嘘つき娘と思われているけれど、芯にはピュアな想いがあったり。

そんな女性の心を描いています。

どろっとした感情も、最後には浄化させてしまうような。
そんな終わり方が多い作品です。

ただ可もなく、不可もなく。
入り込んで、共感するところまではいけず。

そんな短編集でした。

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2007.10.14

『うちのパパが言うことには』 重松清

「小説家・重松清」らしい話は、あまりありませんでした。
タイトル通り、中学生と小学生の娘を持つ「父・重松清」が、感じたこと、考えたことをつづっているエッセイです。

「面白い!」「楽しい!」という本ではなかったですが、親業をしている後輩として、はっとさせられることが幾つかありました。

子供が、生まれて初めての今を生きているとしたら、親だって「生まれて初めての子育て」であるとか。

学校で押す「よくできました」のスタンプには、先生の期待に応えた、という欺瞞が感じられるとか。

子供にかかわる事件に関しても、被害者だけでなく、加害者の親が自分だったら、という検証があったり。

親業真っ只中の、いち父親としての考え方をつづっています。

吃音だった自分の体験を踏まえた内容、生活費を稼ぐためにルポライターをしていた時代のことなど、重松清という人の生い立ちや、今までを知ることができる内容ではありました。

この本について詳しく見る。
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2007.10.03

『おしえて! gooの本 すずめのほっぺはなに色ですか?』 阿川佐和子編

すごくいい、というほどではないですが、予想していたよりは、面白かったです。

ポイントは、おしえて! gooのQ&Aを、ただ転載しただけの本ではなかったところ。

Q&Aは、ラジオの読者投稿のようなもので、あくまでネタフリ。
そのネタを元に、話を膨らませていくのが、パーソナリティーの面白さであり魅力です。

この本も、Q&Aに沿った内容で、もしくは大幅に飛躍しながら、阿川佐和子と編集者が、トークを繰り広げていきます。

名前と顔は分かるものの、出演しているテレビ番組を、ちゃんと見たことがない私。
阿川佐和子という人となりについて、あまり知らなかったのですが、さばさばとしていて、あっけらかんとした方ですね。
それなりに楽しく読むことができました。

おしえて! gooに関する本というよりは、阿川佐和子トーク集、といった感じです。

時折挿入される、フジモトマサルの4コマ漫画が、よかったです。
『ダンスがすんだ 猫の恋が終わるとき』の著者でもあります。

シニカルな要素を含みつつ、ゆるいトークを締めるようなアクセントになっています。

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2007.10.02

『こんな私も修行したい! 精神道入門』 小栗左多里

瞑想、写経、座禅、滝、断食、お遍路、内観。
さまざまな修行メニューに取り組む、エッセイ。

期待していたような、笑いはなく、物足りないです。

普段から妄想を広げて、漫画のネタにしているという著者。
雑念から解き放たれる、解脱とは、真逆の状態です。

宗教に入りたいわけではない、という筆者なので、宗教的喜びが混じっていない、冷静な体験談になっていると思います。

ただ、ストイックな修行は、どれもしっくりこなかった模様。
きついとか、つらいとか、そんな感想ばかりで、面白そうには感じられませんでした。

大変なエピソードも、ツッコミを入れて笑いに昇華できていれば、エッセイとして面白いのですが、そうでもなく。
「あー、つらそうだねー」と思うだけで、内容的に残念でした。

小さいころから、素晴らしいお坊様と、家族ぐるみの付き合いがあったという筆者。
「お坊様はかくあるべき」という理想が高く、解脱し切れていない坊さんに、厳しいダメだしをしていきます。

宗教には入りたくない、と冒頭で宣言していただけに、意外な一面を見ました。

ちょっとだけ興味がわいたのは、8章の「内観」。
自分が今まで、回りにしてもらったことを書き出し、それに対する感謝の念を新たにしていくというものです。

宗教色も薄く、感謝の気持ちを改めて持つ、という教えそのものも、納得がいく気がしました。

見ず知らずの赤の他人に、自分の生涯を分析して話す勇気が、なかなか出せそうになりですが。

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2007.10.01

『「私」をリセットする旅へ』 藤原美智子

筆者は、ヘア&メイクアップアーティスト。
ゴージャスな旅から、シンプルな旅。
仕事絡みから、プライベートなものまで、旅にまつわるエッセイ。

お洒落なことを書いているんだけど、全てが表面的で上滑りに感じました。
エッセイって、もっと人となりが表に出てくる、生身の文章だと思うのです。
その人を感じられる文章というか。

それがあまり感じられず、著者名が藤原美智子でも他の人でも、変わらないのではという気がしました。

無駄がなくて、生活感がなくて。
だけど魅力もあまりない、お洒落なショールームのようで、引き込まれませんでした。

写真が添えられていれば、また違っていたかもしれませんが。

旅に持っていく、小物と洋服の厳選の仕方は、ためになりました。
これこそ、写真が添えられていたらよかったのに、と思います。

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2007.09.07

『四国はどこまで入れ換え可能か』 佐藤雅彦

『ねっとのおやつ』を改題した本。
可愛らしいイラストで、ゆるい話を多く納めた、コミック集です。

『プチ哲学』のように、はっとさせられるような切り口、目から鱗のものの見方を期待していただけに、物足りなかったです。

「階段のデンキの秘密を明らかにしたい!」「Let's 錯覚!」のような話を、もっと読みたかったです。

まず開いてみて予想外だったのが、文章ではなく、漫画だったこと。

「ねっとのおやつ」は元々、ウィークディに毎日、ネット上で配信されたコンテンツです。
本書は、その絵コンテを元にしたものでした。

アニメーションが元だけに、一つの話のコマ数が多いです。
4コマ漫画に比べると、冗長で、説明がくどくどしい感じがしました。

無駄なコマが多いというか、もっとブラッシュアップできそうというか。

アニメーションで見るときは、これくらい説明があったほうがいいのかもしれませんが、漫画で見ると、推敲不足のように見えました。

現在「ピタゴラスイッチ」で放送されている、「フレーミー」のオリジナルが、本書に納められています。

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2007.09.06

『となりの姉妹』 長野まゆみ

すごく面白い、というほどではないものの、ちょっとした謎解きがしっくり収まっていくのは、気持ちよかったです。

亡くなった菊屋の奥方の持ち物から、「イッコちゃんえ」と書かれた封筒が見つかります。
中には、見知らぬ男のモノクロ写真。
男の正体と、封筒の意味を求めて、佐保と逸子は、調べ始めます。

一方、逸子が姉妹で住まう家は、二階を改装。
短期間契約の、貸し部屋にすることに。
そこには入れ替わり立ち代り、住人が引っ越してきて、ちょっとした事件が起きたりするのでした。

「領収書」と書かれた封筒の中には、預金通帳。
「ウワバミ」と書かれた罐の中に、銀行用の認印。

菊屋の奥方の謎かけは、ちょっとした日常の謎風で、面白かったです。

今までの長野まゆみ作品は、ぴりぴりと緊張感ある、親子関係が多かったように思います。

今回は、佐保の家族も、立彦兄の家族も、逸子姉妹も、ほのぼのとしたあたたかい家族です。
頑として髪を切ろうとしない、ショウマへの接し方も、微笑ましかったです。
なんだか、新境地を拓いた作品だな、と感じました。

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2007.08.31

『神様がくれた指』 佐藤多佳子

プロのスリ師、マッキーの目の前で、大事な"お母ちゃん"の財布が掏られた!
しかも相手は、ガキの集団。
マッキーは追跡するものの、中の一人にノックアウトされ、気絶寸前のところで、昼間に助けられます。

怪しげな昼間の部屋に居候しながら、犯人探しをするマッキーですが……というお話。

悪くはないんだけれど、さりとて入り込めるわけでもなく、といった感じ。

マッキーこと辻の、キャラクターが掴みきれなかったというのもあります。
咲との恋愛では、初心な中学生のようなところを見せたり。
一方で、ただ飲み屋に座っているだけで、一般のサラリーマンに、恐怖を与えるような存在でもあって。

怖い人間なのかそうでないのか、最後まで掴みかねました。

占い師マルチェラと、男性としての自分を使い分ける、昼間も漠然としています。
生活費もすってしまうようなギャンブラーでありながら、賭博狂のようなところもなく。

主役二人をどうも掴みきれないまま、進んでしまいました。

どうして最後に辻があのような申し出をするのか、という点にも、違和感を感じてしまいます。

プロのスリとして、ハルのスリの技を見たいという思いは、伏線があったので、突拍子もないものではありませんでした。
けれども、西方の大将や、咲などにした非道な振る舞いを考えると、やはり素直に頷けないものがありました。

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2007.08.27

『精霊の木』 上橋菜穂子

"守り人シリーズ"などを書いた、上橋菜穂子のデビュー作。
それなりの世界は作っているものの、いまひとつ入り込みにくかったです。

地球環境を破壊しつくした人類が、次に移り住んだのは、宇宙の星でした。
舞台は、その中の一つ、ナイラ星。
先住民のロシュナールが滅び、今は移民である人類だけが暮らしています。

ところがある日、リシアがロシュナールの持つ"力"に目覚め……というお話。

インディアンを伝える歴史の一方的さに始まる、先住民への横暴。
人類の絶えることない開発と、もたらされる環境破壊。
それらへの怒り、主義主張、諭したい、という思いが溢れすぎて、小説ではなく、道徳の教科書的な臭いが漂っています。

執筆の動機の根底に、そういった思いがあるのはいいのですが、それを小説に昇華し切れていない感じ。

舞台は、科学や医学が進歩した、未来。
緊急時信号発信装置、人間能力回復法制定など、妙に漢字が多いのも、読みにくさの一因でした。
言葉、というか漢字だけで、未来の世界を表現しようとしている無理があります。
もっと文章全体の表現で、未来らしさを表現しないと、イメージが見えてこないと思います。

多くの人物が登場しますが、それぞれの書き分けもいまひとつ。
『精霊の守り人』『闇の守り人』『夢の守り人』のような、冒頭から引き込まれるような文章にはなっていませんでした。

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2007.08.16

『ナイチンゲールの沈黙』 海堂尊

『チーム・バチスタの栄光』の続編。
更なるブラッシュアップを期待していましたが、期待外れでした。

東城大学医学部付属病院の小児科病棟には、難病を抱えた二人の少年がいました。
病名は、網膜芽腫(レティノブラストーマ)
彼らは、眼球を摘出しなければならないのです。

そんな子供たちのメンタル・ケアのため、田口の愚痴外来が、小児科向けとして開かれることになります。

その最中、子供のうちの一人、牧村瑞人の父が殺害されたとの報が入り……というお話。

前作は、オチが悪かったものの、そこまでの謎の引っ張り方は、なかなか魅力的でした。

ところが今回は、犯人も動機も推測可能で、魅力的な謎がありませんでした。
単純な事件に見せかけておいて、最後にどんでん返しがあるのかも、という淡い期待も、詠み終えて消え去りました。
ミステリ的な魅力は、全くなしです。

厚生労働省の変人・白鳥に、彼に勝るとも劣らない変人の旧友、警察庁の加納警視正が現れたり。
二人の間で、新たな次元の議論が繰り広げられたり。
高階病院長に、田口先生がやり込められ、貧乏くじを引かされたり。

前作同様の、キャラクターに拠った舌戦も、魅力的な謎がないと、単なる空回りに感じます。

前作では、田口と白鳥の聞き取り手法が、ストーリにマッチしていたから面白かったのです。
ベースとなる謎がないまま、ただ妙な聞き込みをしても、浮いてしまいます。

姫宮登場と聞いていましたが、結局表に出ないままだったのも、がっかりです。
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2007.07.18

『ゲド戦記4 帰還』 ル=グウィン

戦いを終え、魔法の力を使い果たし、空っぽになったゲド。
普通の男と結婚し、農家で子供を生み、普通のおばさんになったテナー。

エレス・アクベ腕輪を復活させた二人の再会と、再出発の物語。

暗く、ひどく、痛ましい出来事の描写があります。
それはテナーが引き取った娘、テヌーにまつわるもの。

テヌーになぜそのような過去を負わせなければならなかったのか、あまり必然性が感じられません。

そのため、前半は不快感があり、やや読みにくさがありました。

ハブナーに王が現れたり。
オジオンが亡くなったり。

世界が大きく変化する中での出来事です。

テヌーの変化や、カレシンの登場など、最後の方はまぁまぁの面白みだったものの、全体としてはいまひとつ。
読んでいて心地よいお話ではなかったです。

魔法の話も減るし、男女の物語みたいでした。

女は力を持たず、男のもの。
という議論にも、違和感を覚えました。

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2007.06.22

『ベルカ、吠えないのか?』 古川日出男

『このミステリーがすごい! 2006年版』国内7位。

最後まで世界に入り込めず、読むのが苦痛でした。

イヌよ、イヌよ、お前たちはどこにいる?

という冒頭の呼びかけに象徴されるように、犬への呼びかけが多いです。
それだけに留まらず、「オレハ……オレハいぬダ。」というように、犬の内面をつづった部分も多いです。

この独特の語り口が鼻について、読みにくかったです。

犬、特に軍用犬の血を通して、米ソの対立から現代までの歴史を描こうとしているのだろうけれど、イヌ一匹一匹の描写が浅く、思い入れができません。
時折現れる品のなさも、あまり必要性や効果が感じられず。

これから作ろうとしている歴史小説の構想を綴った、断片的なメモを読まされているような感じがしました。

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2006.12.25

『うそうそ』 畠中恵

「しゃばけ」シリーズ第5弾。
悪いとまでは言いませんが、期待はずれでした。

病弱な若だんなが、ついに長旅に初挑戦。
ところが、船出からトラブル続出。
湯治で健康になるどころか、平素より過酷な生活を強いられて...というお話。

遠出によってマンネリ化脱出を試みたのかもしれませんが、魅力がいまひとつ出し切れていませんでした。

お比女の一太郎への敵愾心が、説得力に欠けるし。
天狗と兄やの対決も、ご都合主義的なところがあるし。
前半の謎の提示は興味深かったですが、その解決に長編らしいパンチがないし。
お比女の成長や、天狗と兄やの心情の変化が重要なところですが、描写が浅くていまひとつ共感しきれず。

長さに見合った、魅力的な謎解きと盛り上がりがなかったです。

金次第で働く雲助の、新龍の精神的な逞しさは眩しかったですね。

それから、お菓子の取り合いで騒いだり、兄やたちに怒られたりだった鳴家。
この旅では、愛嬌満点でした。

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2006.12.07

『セリヌンティウスの舟』 石持浅海

推理合戦は悪くないものの、今ひとつ納得できませんでした。

大時化にもかかわらず、スキューバダイビングを敢行し、漂流してしまった6人。
海上で一つの輪になり、お互いを支えあいながら生き延びて、強い心の絆で繋がった6人。

そんな6人で集まっていたある晩、仲間の一人、美月が青酸カリを飲んで自殺します。

青酸カリが万が一こぼれた場合、その場にいた仲間までも死に至らしめてしまいます。
彼女が大切な仲間を、そんな危険に晒すはずがありません。

彼女は、本当に自殺だったのでしょうか。
それとも、青酸カリが零れないように事後処理をする、協力者がいたのでしょうか。
いたとしたら、それは一体誰なのでしょう。

残された5人は、真実を求めて議論を始めます。

ミステリ好きのための、議論のための議論というか、仮説を組み立てては、論理的に崩していく過程を楽しむ話です。
推理するのは、警察でも探偵でもない普通の人々です。
頭の回転がよく、標準より論理的な思考回路の面々が推理合戦を繰り広げる辺りは、『扉は閉ざされたまま』と似ています。

が、今回は動機が今ひとつですっきりしませんでした。

そもそも6人の絆を感じさせるエピソードが、海上での漂流の描写しかなく、「美月が、わたしたちを殺そうとするはずわけがない。」などと力説されても、共感しづらいのです。
その可能性を検討しないまま、他の細かい部分にはこだわる点にも、馴染めないものを感じたり。

メロスの身代わりで人質となった、『走れメロス』のセリヌンティウスの比喩も、ぴんと来るものではなく、すっきりしない読後感でした。

この本を読むきっかけとなったのんびり前進じたばた生活さまのレビューでも、

推理を繰り広げるところは面白かったですが、 何故死を選んだのかなどなどまゆびには共感出来ないこともたくさんありました。

とあり、同感でした。

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2006.08.24

『おぼえていてね アーカイブ星ものがたり』 市川拓司作/こじまさとみ絵

映画「いま、会いにゆきます」で佑司が大切にしている絵本を書籍化したもの。

でも映画の絵本そのままではない気がします。
文字も活字だし、文面も違うような。

できれば映画と同じ作品がよかったです。

澪視点の、映画を観た人には分かるストーリーとなっていますが、単体の絵本として、子供に読ませるという観点からすると、それほど魅力は感じませんでした。

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2006.08.16

『強気な小心者ちゃん』 鈴木ともこ

「石橋を叩いて渡る」のではなく「石橋をどうやって叩いたらいいのか悩むとキリがないから、怖いけど一気に渡っちゃえ!」と、突き進んでしまうタイプの小心者。
そんな筆者が、日常生活、ショッピング、食事、デート、海外旅行といった様々なシチュエーションで感じたことを綴ったエッセイです。

漫画スタイルでほのぼのというところが、『150cmライフ。』に似ています。

それなりにうんうんと思うものもありますが、物凄く共感するというほどではありませんでした。
ツボにハマるほど掘り下げられていないというか、よくあるエピソードというか。
特に章終わりにある「小心者さんの強気格言」がぴんと来ませんでした。
私は小心者じゃないのかな...?

さらっと読めて楽しいですが、一読すれば充分かなという気もします。

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2006.08.14

『くつしたをかくせ!』 乙一

乙一初の絵本。

正直本文よりも、「あとがき」と本人たちによる「プロフィール」が面白かったです。
エッセイ『小生物語』や他の作品のあとがき同様、思わずにやりとしてしまう笑いが散りばめられています。

僕があとがきに書くのは夢も希望もない現実の悲喜こもごもなのです。

といいつつも、そこにはユーモアがあり、心が解きほぐされてふと微笑んでしまうのです。

絵本は、羽住都の挿絵がとても綺麗でうっとしりました。
少年も少女も可愛らしくて、水彩画らしい優しさがあります。
精緻な色使いで多くの色を注ぎ込みながら、ごちゃごちゃとせず、全体が一つのトーンにまとまってしっくりと馴染むのです。

画集も出ているようなので、見てみたいなと思います。

どうして大人がサンタを怖がるのか、答えは分からずじまい。
真剣に考えると、奥の深そうなテーマです。

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2006.08.13

『あめふらし』 長野まゆみ

何でも屋のウヅマキ商會を営む橘河は、一癖も二癖もある男。
実は、死者のタマシイを拾って、河を渡らないように繋ぎとめておける"あめふらし"なのです。

そこで働くのは、橘河にタマシイを拾われ、有無を言わさず働かされているアルバイト少年の市川岬。
そして、空蝉の身に寄宿して生きる中村。

この本では、ウヅマキ商會の引き受けた、不思議な依頼とエピソードが綴られています。

幻想的で、現代のような過去のような、現実と異世界の間のような、不可思議な雰囲気はいかにも彼女らしいです。
仄めかし、隠喩、示唆。
掴めたような把握しきれないような、不思議な感覚が漂います。

特にその味わいが出ていたのが、結婚相手を探して欲しいという老婦人の願いをかなえた「わたつみ」。
時代を移動するような不思議感覚が生きていました。

散りばめられていた伏線がまとまっていく後半の方がより面白いですね。

主役である市村峠、岬兄弟は、『よろづ春秋冬』の2人とのこと。
ボーイズラブ作品なのにわりと読みやすいところが、共通しています。
ストレートだから、逆にからりとしているのかも。

個人的には、ボーイズラブ色のない作品がまた出て欲しいなぁと思います。

この本は、夢みるととろ日記さまのレビューにて、

何のこっちゃっていう説明ですが、そうとしか言いようがありません。何しろ長野さんお得意の幻想譚なのですから説明は不可能です>おいっ!

と紹介されていたのがきっかけで読みました。

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2006.07.25

『白銀を踏み荒らせ』 雫井脩介

練りが足りないというか、全体的に浅かったです。

富良野大会の競技中、日本人初の優勝を目前に、石野ケビンは謎の死を遂げます。
同じ競技をする弟のケビンは、兄の死がトラウマになり、今ひとつ伸びが出てきません。
彼のメンタルトレーニングのため、篠子はアルペン競技日本チームに大抜擢。
ところが奇妙な事件に巻き込まれて...というお話。

誰が裏切り者か分からず、あれこれ推理しながら戦々恐々とするのでもなく。
犯人側の描写が詳細で「こんな緻密な作戦、どうやって突破するの!?」というドキドキがあるのでもなく。
読んでいると何となく犯人が分かってしまうという、中途半端な状態でした。
犯人が判明するのがクライマックスなはずなのですが、薄々気付いているために何も驚愕がないのです。

ホフマン教授の依頼で動き始めたときも切羽詰った感じはなく、往々にしてどのシーンでも怖さが伝わってきませんでした。
もっと深く、スリルを感じさせられたら、もう少し面白くなると思うのですが。

アルペン競技についての知識はつきましたが、それももっと詳しくてもよかったと思います。

ストーリーも起承転結が一応ある展開だし、真っ直ぐで熱い五十嵐とか、変人深紅とか、キャラクターもまあまあの出来です。
なのにあっさりしていて、のめりこむような深さがない。
もっと練って、奥深い作品に仕上げられたら、また評価も変わるのにと思います。

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2006.07.04

『黒笑小説』 東野圭吾

タイトルそのまま、ブラックユーモア短編集。
特に面白かったのは2編だけですが、全体としてまあまあの面白さでした。

特に面白かったのが「ストーカー入門」と「臨界家族」です。

「ストーカー入門」は、「本気で好きなら自分をストーカーするように」と振られた彼女に強要され、渋々ストーカーを始める男性の話。
設定も面白かったし、振られてもなお彼女に振り回される男性の悲哀が笑えました。
陰湿で怖いはずのストーカー行為ですが、やる気のない主人公によって、ユーモアのある馬鹿馬鹿しい行為に変貌しています。

「臨界家族」は、次々生み出されるアニメのキャラクターグッズに振り回される川島一家の話。
似たような年頃の娘を持ち、キャラクターグッズも多少は買い揃えている親としては、親近感を持って呼んでしまいます。
それでも皮肉っぽくはなく、上手くユーモアのある仕上がりです。

タイトルに笑ったのが「シンデレラ白夜行」。
確かにシンデレラは雪穂を髣髴させなくもないですね。
着想が面白いと思いました。

それから今回は、出版業界をもじった話が多かったです。
一つ一つは特別面白いというわけではありませんでしたが、ネタ元が分かるものはにやっとしてしまいますね。

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2006.06.28

『ハリー・ポッターと謎のプリンス』 J.K.ローリング

そこそこ楽しくて悪くはないんだけれど、特別面白いというわけでもない。
そんなシリーズ第6巻でした。

第1巻にあった、スリリングでワクワクする、テンポのよい冒険は殆どありません。
強いて言うなら、第7巻の最終章へ向けての最後の盛り上がりくらいでしょうか。

ヴォルデモート卿の復活が明らかになり、治安が悪くなったためか、ユーモアや笑いが少なく、全体的に暗い感じがします。
憂いの篩(ペンシーブ)に代表されるように、最終章に向けての布石として、説明的なシーンが多いです。
また思春期を迎え、恋愛事情に多くのページが割かれています。

長いシリーズで熱心なファンも多く、過去に登場した周りの人の話題を振りまいたり、恋愛事情を書くと、喜ばれるのかもしれません。
が、単なる青春小説になってくると、ファンタジーとしては雑多な印象になり、内容が薄く感じられます。
推敲して、絞るべきところは絞るべきではないでしょうか。

「asahi.com:ハリー、完結編で死ぬ運命? 著者ローリングさんが示唆」では、

ローリングさんは90年ごろに最終章をすでに書き上げていたと話し、「当初考えたストーリーでは、彼を死なせるつもりはなかった」。ところが、最近になって最終章の内容を変更したとし、「1人は助かるが、2人は死ぬことになるだろう」と述べた。

と、最終章についての話題が出ていますが、もっと児童書の原点に戻った、読者の心を惹きつけて止まないわくわくした展開を望みます。

↓↓↓以下、ネタバレあります↓↓↓
ついに重大な局面を向かえ、ダンブルドアが亡くなりましたね。
本当に昇天してしまったのか、復活しないのかは疑問が残りますが。

ヴォルデモート卿(トム・リドル)の本性を見抜いたほどのダンブルドアが、なぜスネイプに関しては鵜呑みにしていたのか。
本当にスネイプの行動が偽装であり、ダンブルドアが信頼するに値する人物であればよいですが、そうでなかったとしたら説明不足な感じが否めません。
この不満も、第7巻で解消してほしいものです。

↑↑↑ネタバレ、終わり↑↑↑

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【2008.10.19 追記】
『ハリー・ポッターと死の秘宝』読了しました。

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2006.06.19

『ICO 霧の城』 宮部みゆき

プレイステーション2のゲーム「ICO」を元に、作品世界をノベライズした作品。

生まれながらにして頭に角を持つニエ。
トクサの村には、その幼いニエを生贄として送り出すというしきたりがあります。
幼い子供に重責を負わせる村人たちの葛藤、悪への恐怖と少年の勇気がよく描かれていて、宮部みゆきらしいと思いました。

しかしその後は、城をただ巡りながらの回想シーンが多く、ストーリーとして変化に欠けています。
回想ばかりでエピソードが少なく、ニエのイコや、謎の少女ヨルダに、思い入れが湧く暇もありません。

そして何より、諸悪の根源である存在を討伐するシーンが消化不良でした。
なぜその存在が残り続けたのか、なぜイコは脅威足り得なかったのか、そしてなぜ最後には倒せるのか。

あまりにあっけなく、また説得力に欠けていました。
なんだかご都合主義に思えて、ドラクエのラスボスのように、一度倒したくらいでは終わらない、しぶとさが欲しいところでした。

掴みがよかっただけに、その後がもったいない作品でした。

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2006.06.15

『雨はコーラがのめない』 江國香織

不思議なタイトルと、シンプルながらお洒落な表紙に魅かれて手にしたエッセイ。
飼い犬の"雨"くんとの生活と、共に聴いた日々の音楽の話が中心です。

洋楽が殆どで、タイトルだけではメロディーが頭に思い浮かばないものばかりで、ちょっと入り込めずでした。
「あ~、あの曲」と分かる人は、共感できてもっと面白いのかも。

それでも、大好きな曲や歌声について、単に「好きなんです」と紹介するのではなく、

たとえば、一人で外国を旅していて雨に降られ、びしょ濡れになって夜のはじまりのカフェにとびこむと、そこは温かく、人がいて生活があり、にぎやかで、コーヒーやお酒やいためたガーリックの匂いなどもして、一人のまま、でもふっと安心する。それと似ている。

と、自分が受けている感覚を表現する力は、さすが作家だなと思いました。
そこにはストーリーがあり、匂いがあり、温度がある。
曲を聴いている彼女の感覚が、一瞬こちらにも再現するような、素敵な描写なのです。

面白かったのは「まったりする」という表現についての章。
私は大学の頃覚え、以来自然と使っていますが、彼女にとっては意味を掴みかねる表現だったようです。
その言い回しを教えてくれた若い美容師さんに、細かいニュアンスについて根掘り葉掘り訊いたり、実際に「まったり」を実践してみたり。
その姿がお茶目で、可愛らしかったです。

"雨"くんを可愛がるエピソードが微笑ましかったので、音楽ではなく"雨"くんにシフトしたエッセイを書いてみて欲しいです。

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2006.06.11

『案じるより団子汁』 小林聡美

ラジオ「小林聡美の東京100発ガール」を文章に起こしたエッセイ。

きちんと推敲しているであろうエッセイに比べると、即興で話しているラジオでは笑いのレベルは落ちますね。
ラジオを聴いていなかった身として、「こんな番組があったんだ」という一通りの興味は満たされますが、特別面白いというものではなかったです。

彼女が普段から、物凄い早口であることは分かりましたw

唯一面白かったのが「ゲストのコーナー」です。

三谷幸喜との入籍を発表した直後だったらしく、桃井かおりの質問は三谷幸喜関連に集中。
鋭い攻めにたじたじしつつも、マスコミ発表では聞けなかったであろうトークが面白かったです。
「やっぱり猫が好き」の話題も少しありました。

このドラマって、ちゃんと脚本があるんですよね。
三谷幸喜も脚本家として参加していたから、小林聡美と出会ったわけですし。
でも子供心には、脚本のないアドリブのようで、不思議なドラマだなという印象が残っています。

「やっぱり猫が好き」つながりで、もたいまさこも登場。
「売られた喧嘩は買う」怖い人だというのが意外でした。

蛇足ですが、なぜ「東京以外の地方で放送」だったのかと気になったりしました。

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2006.06.02

『陰陽師 鉄輪(かなわ)』 夢枕獏

心変わりした男を想い続け、丑の刻参りを成し遂げようとしてしまう、徳子姫の話。
既に何度も描かれているモチーフで、『陰陽師 付喪神ノ巻』『陰陽師 生成り姫』を読み、映画「陰陽師」を観ました。
そのためか、今回は全体的に浅く感じてしまいました。

唯一はっとしたのは、博雅の台詞。

「晴明よ、おまえはよい(おとこ)だ」

いつも言っている台詞を返されたときの、晴明の苦笑が何とも微笑ましいです。

小説「鉄輪」だけでなく、それを基にした舞踏劇の台本「鉄輪恋鬼孔雀舞(かなわぬこいはるのパヴァーヌ)」が収められています。

男が藤原為良から藤原兼家に変わっていたり、保名と葛葉、蘆屋道満が登場したり。
"台本化する"という変化の過程は興味深いですが、台本そのものは余り面白くありませんでした。

ということで、ちょっと物足りない一冊です。

丑の刻参りの舞台は貴船神社で、その祭神は高龗神(たかおかみのかみ)
今まで読んでいたときは特に気に留めていませんでしたが、『少年陰陽師』シリーズを読んだ今では、連想する世界が随分と異なりますw

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2006.05.29

『海国記 平家の時代』 服部真澄

ノンフィクションかと見紛う緻密な小説を得意としてきた筆者。
今回は初挑戦の歴史小説ですが、読み難くて、全く入り込めませんでした。

同じく新境地を拓いた作品に、『清談 沸々堂先生』があります。
数寄者を主人公に据えたキャラクターもので、なかなか面白かったです。

しかし今回は、期待外れに終わりました。

平正盛、忠盛、清盛の3代と藤原公経と、幅広い世代を取り上げているのが特徴です。
そのため各々の描写が浅く上滑りで、登場人物に感情移入できないのです。

安易に数十年後に移行し、人物像が変貌してしまうのも頂けません。
何がきっかけで、何を考えながら変わっていったのか、その心の内を描くのが小説のはず。
歴史の点と点を結ぶだけでは、物語世界に入り込めませんでした。

同門の人物でも、父方の縁者があり、母方の縁者があり、異母兄弟で思惑が異なったり。
父と母の血縁が明らかになって、初めて分かる、複雑な敵対関係を持つ時代です。
上巻には家系図があるものの、父子関係を主としたもので、母方の縁者を拾えておらず、人物関係の把握に役立ちませんでした。

同じく男性陣の描き方が弱い同時代小説に、吉屋信子の『女人平家』があります。
しかし、こちらは女性視点でじっくり描いていたので、女たちのみた『平家物語』として、一つの世界を描き出していました。

本書にはそういった"何か"がなく、手広く手を出したものの、扱いきれていないという印象が残りました。

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2006.05.19

『ネバーランド』 恩田陸

男子校の寮「松籟館」で冬休みを過ごす「居残り組」の少年たち。
進学校の、世間一般では優秀なはずの少年たちは、微妙な緊張感を保ちながら、新たな関係を構築しようとします。

物語が進むにつれ、どこか陰を含む彼らの事情や心境が、明らかになって行く手法は、『黒と茶の幻想』に似ていますね。

更に、男子校の寮という舞台設定といい、少年の心の機微というテーマといい、萩尾望都の『トーマの心臓』に似ているなと感じていたら、

当初の計画では、「トーマの心臓」をやる予定だった。

とあとがきにもあって驚きました。
あの漫画ほどは陰鬱ではないですけれど、世界観が似ています。

腹の底に仕舞っていた感情を吐き出してしまっても、どす黒くなく、最後はなんとか爽やかになっているのは、少年たちの年齢と、(おさむ)の存在によるところが大きいでしょう。
ナチュラル・ハイの変人のようだけれど、実は芯があるし、なにより場を明るくしてくれます。

悪くはないんだけれど、何か引き込まれていくようなプラスアルファがなかったです。

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2006.05.07

『オリエンタルラジオ1』 オリエンタルラジオ

巻頭の写真が、ファンには堪らないでしょうね。
本人たちの写真による「武勇伝」公式振り付けは、レイアウトが面白いですが、動きを文章で説明されても難しいです。
DVD見たほうが早いかな、とw

一番面白かったのは、コラム厳選『よしもと∞』トーク集。
ラジオを聴いているファンなら周知かもしれませんが、こういう普通のトークを聴いたことがなかったので、興味深かったです。
2人の過去とか、ネタ以外での会話の調子などを垣間見ることが出来ました。

武勇伝をまとめたコーナーもありますが、ネタは文章で読むものではなく、見るものだなと改めて感じました。
二人の動き、表情、リズム、ネタの重ね方、そしてその場の雰囲気といった諸々の要素があってこそ、笑えるもの。
特にこの2人は「型」に依存する部分も大きく、文字だけで読むとぴんと来ないものが多々あります。
全てのネタに2人のコメントがついているので、裏話を知るという意味はありますが。

最初からタイトルに"1"とついているところに、続編への意欲を感じますね。
インタビューの言葉の端々にも「上へ登りつめてやる」という気概を感じます。

それにしても、中田敦彦はゴリラが好きなんですね。
ネタにも小説にも繰り返し登場していました。
その巻末の中田の小説は、シュールで正直笑えませんでした。

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2006.05.01

『日暮らし』 宮部みゆき

『ぼんくら』の続編。
随分前に読んだのか、詳細が思い出せないのですが、鉄瓶長屋とか、大店湊屋の葵とおふじの対立とか、美形の弓之助とか、ぽつぽつは覚えていたので、読み始めてしまいました。

が、『ぼんくら』を読み返してからにすればよかったと後悔です。
事件そのものは『日暮らし』の中で収まりますが、『ぼんくら』の諸々の解決編とでも言うべき位置づけなのです。

上巻の短編は、状況も分かりやすく、宮部みゆきらしさを感じながら読みましたが、長編の「日暮らし(承前)」は、長いわりにわくわく感が少なく、入り込みにくかったです。

外れの少ない宮部みゆきにおいて、唯一苦手としているのが、この江戸時代モノです。

宮部みゆきの魅力は、読んでいるだけで登場人物や状況が頭に入ってくる文章力です。
容姿や性格、過去について説明的な文章があるわけではないのに、ふとした台詞や仕草といった行間から、その人となりや過去、考え方がありありと浮かび上がってくるのです。

この江戸時代モノでは、その魅力が充分発揮しきれていないのでは、と思います。

人がよくて頼れる女将さんとか、権力者の意向を伺うお役人とか、ステロタイプになりがちで、行間から浮かび上がる人物像というものが朧なのです。
江戸時代らしい言葉遣いにせざるを得ませんし、江戸時代のルールや常識に則った世界でなければいけないという、制約ゆえかもしれません。

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2006.03.18

『私が語りはじめた彼は』 三浦しをん

ルックスには決して恵まれていないのに、なぜか女性の心を掴んで離さない、大学教授の村川。
そんな彼に振り回される、妻、実の娘、後妻、その連れ子、部下である助手...。
村川を巡る関係者の視点で描いた、オムニバス短編集です。

エッセイが面白いことと、本業(小説であったり漫画であったり)が好みに合うかは、全く別の話。
彼女の妄想炸裂の大爆笑エッセイが好きなものの、小説自体は当たりと出るか外れと出るか、挑戦のつもりで手にしてみました。

設定が設定だけに、男女関係の生臭さ、嫉妬、渇望、諦念、といった人間の心の暗部への描写が目に付きます。
エッセイでも感じていた描写力が充分発揮されていて、場面がありありと浮かぶものの、ふと出てくるダークな面も鋭く描けてしまっているというか。

冷たい水のような作品で、当然ながら笑いはないです。
読みやすいんですけれど、残念ながら小説のファンにはなれなさそうです。

唯一よかったなと思うのが、「水葬」でした。

謎の依頼人によって、村川綾子を調査することになった"渋谷"。
本来調査対象(ターゲット)とは一定の距離を保たなければいけないなのに、"渋谷"は彼女に魅かれ、興味に抗えず、近付きすぎてしまいます。
一方綾子は、彼を「殺し屋」だと思い込んでいる、というお話。

何かを内に秘めた綾子と、本来の自分を見せない"渋谷"。
謎めいた2人のやり取りが、独特の空気を生み出していて、不思議で美しかったです。

実は途中まで、全ての短編が繋がっていることに気がつかないお間抜け振りでした。
はっと気がついてから、慌てて戻って関係図を書き、登場人物のつながりを整理しました^^;

「4104541036」

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2006.02.28

『ひとりずもう』 さくらももこ

テーマは青春。
男子とわりと仲のよかった小学校、逆に嫌悪感を抱き始めた中学から、女子高時代の片思いを経て、漫画家としてデビューする短大までの軌跡です。
ペンネームの由来や、目がキラキラした少女漫画とは程遠い、今の画風とエッセイ風漫画に落ち着くまでの、紆余曲折が明かされています。

ノリが良い時に1ヵ月半足らずで書き下ろしただけあり、あれこれ話が飛躍する連載と違って、作品全体に一つのトーンがあります。
漫画化デビューというゴールに向けて、彼女の道筋を辿るようなエッセイです。

冒頭の「不安な日々」のオチのつけ方に、にやりとはしたものの、意外と真面目なエッセイという印象を受けました。
特に漫画を投稿するようになって以降、デビューにかける思いや、夢を目指す人へのあとがきでの語りかけは、いつもの笑わせるエッセイとは一味違います。

はっさくノートさまのレビューで、

私の中で『ひとりずもう』は 『たいのおかしら』シリーズ?以来、久しぶりに会心の一撃を食らった作品。 いやぁ、文句ナシに面白かった!

と紹介されていたのがきっかけで手にしました。

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2006.02.12

『この日本人に学びたい』 松尾スズキ

哀川翔関係のおすすめ本として、三浦しをんの『乙女なげやり』にて紹介されていたエッセイ。

小説・哀川翔「コーナー、待てよ」は、期待通りの面白さでした。
付き人エイタの目を通した、小説仕立てのコーナーなのですが、これがよく描けています。

火事が大好きで、朝5時でも見に駆けつける情熱とか。
芸名に関するこだわり方とか。
エキストラを前にマイペースでおしゃべりする人柄とか。
どれも"哀川翔"というイメージにぴったりで、「そういうことありそう」と思わず頷いてしまうのです。

巻末の解説によれば、彼の処女小説『同姓同名小説』も、

実際の有名人と同姓同名の登場人物(本人よりも本人らしいその人)を描いて、更に物語に昇華させる

ものであるとか。
実在の有名人の特徴をよく捉え、空想の世界で描く手法が、得意なのかもしれません。
こうやって妄想するという点では、三浦しをんに通じるものがあります。

しかしながら、哀川翔以外は面白くありませんでした。

前振りのはずの日常のエッセイ比率が高くて、本題であるタイトルの日本人の話題が少なかったり。
「学びたい」に即した扱われ方ではなく、その人の過去を暴露するようなものであったり。
芸能ゴシップには詳しくなりましたが、魅力ある内容ではありませんでした。

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2006.02.05

『ナンシー関 大コラム』 ナンシー関

1992年の『何様のつもり』~2003年の『何をかいわんや』の9冊の単行本から、芸能人やテレビにまつわるコラムを抜粋して集めたもの。
かなりのボリュームなのに、ほとんどがネガティヴな評価で、最初は読んでいて重苦しかったです。

きつい言葉の中にも、はっとさせられるような鋭い観察眼、共感できる指摘があってこその、"辛口コラム"。
ただ悪く言っているばかりで共感できないと、陰口の垂れ流しという印象が否めませんでした。

最初の文章は10年以上も前に執筆されたことになり、その時々の空気を斬るのがウリの芸能ネタともなると、時代のギャップも感じました。
「相原勇が調子に乗っている」とか「東ちづるが大物感を漂わせている」などといわれても、ぴんと来ないのです。
後半になって2000年も越えると、当時の雰囲気が思い出せる程度にはなり、少しは共感できるようになりますが。

消しゴム版画をたっぷり堪能できたのはよかったです。

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2006.01.24

『コールドゲーム』 荻原浩

読んでいる間中、砂を噛むような不快感がありました。
後味も苦かったです。

17歳の夏。
中学2年の同級生が、次々と襲われる事件が発生。
犯人は、中学2年当時皆がいじめていた、同級生の"トロ吉"ではないか...というお話。

復讐の内容自体は犯罪であり、許されることではないと思います。
しかし、加害者たちには、そう反論する資格があるのでしょうか。
彼らが"トロ吉"に行ってきた行為、人一人の人生を狂わせた行為も明らかな犯罪であり、釈明の余地がないのです。

彼ら自身に明らかな非があり、復讐されるのは自業自得である。
そうどこかで冷めた気持ちになって読んでいたところがあるのでしょう。

彼らが今回の事件を通して何かを感じ、何かを考えようとしても、今更取り返せないものだってあるのだ、と引いてしまうところがありました。

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2005.12.25

『プリズンホテル 冬』 浅田次郎

シリーズ第3弾。
ネタ切れかな、という感が否めません。

ヤクザが運営する極道専門ホテル、という設定に面白さがあるのですが、今回はそれを活かした笑いが見られませんでした。
前作の"警察関係者が宿泊"があまりに秀逸だったので、それに勝る展開は思いつかなかったのでしょうか。

今までは沢山の登場人物の問題が、全て解決してすっきり終了していました。
今回は仲蔵の病気や、編集者のその後にきちんとオチがついていなくて、消化不良でした。

登場人物が少なく、メインは清子と孝之介のようです。
群像の中のひとつとしてならいいのですが、主として取り上げるには浅いキャラクターではないかと思います。

本文とセットになっていて笑えたあとがきもなく、物足りない一冊でした。

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2005.12.20

『トリック-劇場版-』 蒔田光治

映画のノベライズ本。

説明的で、脚本のト書きを文章にしたという印象です。
小説というレベルになく、世界が見えてきませんでした。

仲間由紀恵が演じると面白いコメディになるのでしょうが、文章で読むとネタがどれも浅はかで、馬鹿馬鹿しく感じました。
たぶん映像でこそ楽しめる作品なのでしょうね。
映画を観た上で読めば、脳裏に映像が浮かんでくるのかもしれませんが、この本単体では味わえませんでした

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2005.12.19

『宮尾本 平家物語 一 青龍之巻』 宮尾登美子

2005年大河ドラマ「義経」の原作で、4部作の大作。
『天障院篤姫』『東福門院和子の涙』の美しい文章が好きだったので、思い切って手にしてみました。

同じ一門でも誰某親子は上皇側、誰其は天皇側、と入り乱れた人間関係が特徴のこの時代。
平家、源氏というだけでは分けられない複雑な関係図が頭に入らず、思うようにページが進みませんでした。

女性の視点から描いている、前述の2作品は読みやすかったのですけれど。
女性を中心にした『平家物語の女たち』の方が、私には合っていたのかも。

同じモチーフの作品としては、吉屋信子の『女人平家』があります。
『女人平家』では逞しく、一門の長らしかった清盛ですが、本書では継母との関係に悩んだり、一歩控えめな感じがしました。
また聡明で、打てば響くやり取りが魅力だった時子も、夫の連れてくる別腹の子供達に半ば諦め気味だったり。
作者が変わると解釈も変わって、キャラクターが違いますね。

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2005.12.01

『ふしぎなナイフ』 中村牧江/林建造さく 福田隆義え

テーブルの上には、何の変哲もない一本のナイフがあります。
ところがページをめくっていくと、ナイフの先が捩れたり、ほどけたり、千切れたり、伸びたり、摩訶不思議な動きをするのです。

精密に描かれた絵はとてもリアルで、溶けるナイフは本当に液状になっているかのよう。
魔法のように変化するナイフに、子供たちも興味津々。
膨らんだナイフを見ては「わぁ、スプーンみたいw」などと面白がっていました。

1ページ目をみたときに「ナイフは曲がらないのにね」と思わずつぶやいてしまった私。
"不思議なナイフ"なんだから、素直に読まなくちゃいけませんよね。
頭が固くなっているなと痛感させられた一冊でした。

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2005.11.29

『箪笥のなか』 長野まゆみ

主役は、親戚から譲り受けた紅い箪笥。
全体は蝶のデザインで統一されているのに、小抽斗の一つだけが、蝙蝠の留め金具をあしらわれています。
そんな曰くありげな箪笥が呼ぶ、不思議な現象を綴った連作短編集。

大人のファンタジーですね。

夢みるととろ日記さまのレビューで、

日常生活なのにどこか異次元めいた魅力があります。

と紹介されているのに興味を持ち、読んでみました。

なぜか不思議を呼び込んでしまう弟が、魅力的です。
少しずれていて、何でも受け入れられる大らかさがあり、そのくせ理系の現実的な部分も併せ持つ、不思議な人物です。

貝好きの弟に合わせて作られるお料理の数々も、箪笥にしっとりと似合う和のメニューで、美味しそうでした。

両親がいて、甥っ子がいて、義妹がいて、義妹の両親がいる。
そんな普通の家族の話は初めて読む気がして、新鮮でした。

更に少年が登場したら、旧仮名遣いもあったら、と考えてしまうのは欲張りすぎでしょうか。
ハトくんは、少年と呼ぶには幼すぎますしw

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2005.11.24

『魔王』 伊坂幸太郎

表題作は『エソラ vol.1』にて読了していたので、今回は再読になります。
今の政治模様を髣髴とさせる描写は、選挙当日に読んだ前回の方が、よりリアルに感じました。

収められているもう1篇の「呼吸」は、「魔王」の続編なのですね。

「魔王」での詩織は、どちらかというと抜けているような合いの手で、考え込む安藤と対照的。
場を明るくしてくれる、灯りのような存在に感じていました。

「呼吸」では、落ち着いた大人っぽさがあり、明るさの影に繊細に悩む姿が見え隠れしています。
5年という歳月が成長させたとも言えますが、最初違和感を感じました。
潤也は変わらず、世間とは少しずれているけれど真っ直ぐな存在でしたけれど。

「呼吸」はまだ続きがあるような終わり方で、あっけなかったです。
もう1章ありそうな、その先も語って欲しいような。

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2005.11.21

『レイクサイド』 東野圭吾

中学受験を控えた子供たちのために行われた、4家族合同の勉強合宿。
そこに現れたのは、とある男の愛人の死体。
妻が犯行を告白したため、皆で隠ぺい工作を行うのですが...という話。

パーティの内容にしても、奇妙な連帯感にしても、ありがちなので、ある程度読めてしまう面は否めません。
しかしラストはぞくりとしました。

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2005.11.08

『私を変えた一言』 原田宗典

古いエッセイは抱腹絶倒で大好きなのですが、ある時期からあまり笑えなくなっていました。
今回初めて知ったことですが、ある時期から鬱病に罹っていたとのこと。
エッセイの質が変わったことと、鬱には関係があったのかもしれません。

今回は、笑いを増幅させる過剰装飾と、テンションの高い文章も部分的に垣間見られ、久々に笑える話が含まれていました。
古きよき思い出話、つまり親友だったり奥様であったりといった身内話が、やはり面白かったです。

余談ですが、作家の"かんづめ"は"館詰"だというのを初めて知りました。

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『本当はちがうんだ日記』 穂村弘

大爆笑というよりは、ふとしたフレーズににやりとしてしまう。
そんなひそやかな笑いを持ったエッセイでした。
臆病で、モテなくて、素敵になれず、と自虐ネタっぽいものが多かったです。

この方、本業は歌人なのですね。
「悪魔の願い」では文章の中に短歌が自然に入り込んでいて、今ひとつ分からないでいた短歌の世界を少し汲み取れた気がします。
本来は、自分で読み取らなければいけないのでしょうけれど、ね。

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『建てものおりがみ』 桃谷好英

複数のユニットを繋ぎ合わせて作る、建物の折り紙の本。
最初の町をつくる家こそシンプルですが、その他は思いのほか複雑なものでした。

凹凸感のある"お菓子の家"。
屋根瓦やアーチが美しい"石壁の家"。
ミニチュアのように可愛らしい"ヨーロッパの木組みの家"。
スケールの大きい"竜宮城"。

大きさもまちまちな紙、しかもそれぞれのユニットをいくつも折っては組み立てる作品は、どれも芸術的です。

しかしそれなりの気合と集中力がないと、作るのは大変だと感じました。
折り方の工程がところどころ端折られているのも、難しく感じた要因の一つです。

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2005.10.14

『ニッポン硬貨の謎-エラリー・クイーン最後の事件-』 北村薫

『The Door Between』ではなく、正真正銘の国名シリーズ"ニッポン"の遺稿が発見された!
経緯の説明と共に、北村薫が翻訳する、という体裁のパスティーシュ。
しかも『五十円玉二十枚の謎』の解決編にもなっています。

表紙や注の体裁、冒頭の引用句、翻訳独特の自然でない日本語の文体、誤った日本観。
細かいところまで配慮された仕上がりには、いかにもなリアリティがあります。

面白かったのは、訳注=北村薫のコメント部分と、小町奈々子を通して語られるクイーン論です。
前半の注では、『王家の血統-評伝エラリー・クイーン-』翻訳の裏話などが語られています。

クイーン論や細かい注に関しては、特別クイーンファンでない私には、完全に理解できていないでしょう。
それでも読み込みの深さへ驚嘆すると共に、興味深く読めました。
ファンなら更に深く楽しめるのでしょうね。

謎解きとしては、犯人の思考の一貫性に疑問があったり、動機に今ひとつ説得力がなく、物足りない印象があります。

「あらずもがなのあとがき」にもありますが、小町奈々子のモデルは若竹七海ですよね。
「訳者あとがき」の最後1行でにやりとしてしまいました。

この本は、second messageさまのレビューがきっかけで読みました。

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2005.09.26

『オー! マイキー』 石橋義正

テレビ東京「アサヤン」の後の数分枠で放送されていた「オー! マイキー」のフォトコミック。

マネキン人形を使うという手法にも驚いたし、アメリカから来た一家なので笑いもアメリカチック。
説明もなく始まる突拍子もない設定に、シュールな展開。
アメリカンジョークもシュールな話もあまり好きでない私なのに、妙に目が離せなかった不思議な番組です。
深夜番組から始まって、今でも続いているようですね。

あの声優さんのテンションと間があってこその笑いなので、漫画形式の写真で見ると今ひとつピンときませんでした。
映像の方が面白かったなと思います。

写真なので、顔や服装をじっくりチェックできるのはいいかも。
女の子たちはわりと可愛いんですけれど、大人の女性たちはどきつい人が多いですね(^^ゞ

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2005.09.22

『ももこの話』 さくらももこ

子供時代の話なので、オチもあるし、それなりの内容になっています。
彼女の"大人の今"のエッセイはつまらないですが、過去の思い出話は面白いですね。
『ちびまるこちゃん』そのまんまです。

まぁまぁのレベルなんですが、期待していたような爆笑はなかったのが、やや残念です。

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2005.09.14

『ダ・ヴィンチ・コードの謎を解く』 サイモン・コックス

訳者あとがきには、

小説を読んでから資料として手に取るもよし、本書を通読してから小説に取り組むもよし

とありますが、ネタバレ記述が満載なので、先に読むのは正直お薦めできません。

本編から引っ張ってきたキーワードを、アルファベット順に並べてあるので、記憶にある話題が多かったこと。
ひとつひとつが長すぎず、端的にまとめてあるので、読みやすいこと。
『ダ・ヴィンチ・コード』を鵜呑みにするのではなく、資料をもとに適宜否定したり肯定したり、わりと公平な立場で検証していると思われること。
『ダ・ヴィンチ・コード』人気に便乗した副読本でありながら、なかなかよい出来でした。

『ダ・ヴィンチ・コード』にはタネ本があり、理論に裏打ちされた作品なのですね。
しかしながら改めて、キリスト教としての衝撃は、キリスト教徒ではない私には分からないなと感じました。
純粋にミステリとしか捉えられず、この説が的を得たとしていても、キリスト教徒と同じようには驚愕できません。

ダン・ブラウン著ではないので、全ての蘊蓄が自然に入ってくる文章だったとは言えません。
しかし、宗教・歴史・芸術について深く考察した書物にしては読みやすく、楽しかったです。
本編を読んで、知的好奇心がうずうずした方には、お勧めです。

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2005.09.12

『エソラvol.1』 伊坂幸太郎他

絵空事をキーワードにした、物語雑誌。
伊坂幸太郎の「魔王」目当てで読みました。

小泉首相としか思えない前総理大臣や、勢いのある未来党党首・犬養。
衆議院議員総選挙の当日に読むには符牒が合い過ぎて、あまりにリアルな政治模様でした。

考えに考える安藤が悩みがちなところを、温かく見守る弟の潤也と、ちょっとずれた恋人の詩織のコンビが、明るくしています。
他の作品でも詩織のような女性が出てきます。
一歩間違えると軽薄になりそうなのに、いいポジションを保っているんですよね。

重いテーマを軽快に、蘊蓄をさらりと。
この絶妙なバランスが、伊坂幸太郎の上手さだと思います。

発行は2004年12月ですが、内容的には『死神の精度』の後に読んだ方がよいようですね。

「魔王」以外は、これといった作品がないのが残念です。
小説はまだよかったのですが、漫画は全滅でした。

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2005.09.07

『手紙手帖』 木村衣有子

書き方の基本から、便箋や封筒、手紙に関するコラム、そして手紙を扱った本の紹介など、手紙にまつわる諸々を綴ったエッセイ。

鳩居堂の、品のあるシルクスクリーンの葉書。
月光荘画材店の、シンプルなのにどことなく可愛らしく、ネーミングもお洒落な便箋。

今でこそメール全盛ですが、元々は手紙が大好きでまめに書いていた私。
素敵な写真を眺めていると、気に入ったレターセットを見つけては買い集めていた頃の気持ちが甦りました。

レターセットコレクションから相手に適した柄を選び、万年筆で間違えないように緊張しながら書いていた手紙。
メールに比べると格段に手間がかかりますが、それはそれで味わいがあって楽しかったものです。

それから木下綾乃氏の切手コレクションの綺麗なこと。
詳しくは彼女の著書『手紙を書きたくなったら』に載っているとのことなので、こちらも読んでみたいです。

折りしも今日は、今でもメールではなく手紙でやり取りをする唯一の友達の誕生日。
昨日は久々にレターセットを取り出して、手紙をしたためました。

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2005.09.05

『きものでわくわく』 大橋歩

着物にまつわるエッセイ。
沢山収められている着物の写真に魅かれて読みました。

同じ着物でも帯によってがらりと印象が変わったり。
鼻緒の色が、着物の柄から取られたものだったり。
着物・帯・草履・バックと、トータルコーディネイトとしての着物を堪能できました。

ただし、全体的に地味目なものばかり。
お年を召した方向けという印象で、私自身が着たいと思うような色柄ではなかったのが残念です。

作者は、もっとお若い方かと勘違いしていました。
私の年代向けで、同じようにコーディネイトした本が出たらいいなと思います。

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2005.08.27

『大奥の謎 秘められた江戸の密室』 邦光史郎

タイトルには「大奥」とあるものの、実際には大奥の話題の比率は低いです。
内容的にも目新しいことは何もなく、切り口も下世話でゴシップ的。
正直がっかりでした。

元々『江戸城「大奥の謎」』だったのを、2003年9月15日に、このタイトルに変更して文庫化しています。
同月2日に、大ヒットドラマ「大奥」が放送を終了した直後です。
内容が伴わないのに、ブームに便乗しようと大奥を前面に押し出すタイトルに変更した、というあざとさを感じて、寒々しいですね。

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2005.08.02

『奥様はネットワーカ』 森博嗣

どういう結末にするのか知りたくてがんばって読破しましたが、とにかく読むのが苦痛でした。
視点がコロコロ変わって入り込みにくい上に、それぞれ自分のことばかりで横のつながりが感じられず、一つの世界として掴み辛かったです。

また途中挿入される、人物ではないタイトルの章が冗長に感じました。
彼の世界が好きな人は、こういう詩的な部分も堪能するのかもしれませんが、ストーリー上必要性が感じられなくて。

一応ワントリックあったので救われましたが、読んでいて面白くなく、全体として不満でした。
絵は可愛らしかったですけれど。

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2005.08.01

『できればムカつかずに生きたい』 田口ランディ

読み始めは、少し粗暴な言葉遣いにビックリしましたが、読んでいるうちに気にならなくなりました。
それよりも、ひきこもりや家庭内暴力といった社会問題に、真っ向からぶつかっていく、そのストレートさ。

アル中気味だった父、ひきこもりだった兄、そしてその狭間でノイローゼになっていった母。
彼女のバックボーンは、もがきながら掴み取った家族との関係なんですよね。
実際に経験し、悩んできた彼女だからこそ、説得力があります。
自分の経験をさらけ出すことで、一つの道標にしているけれども、考えを押し付けていないところが、素直に読める理由かも。

発表当時は批判が多かったというドラえもんの話は、最近似たようなことを考えていたのではっとしました。
明らかにのび太が悪いのに助けたり、自分勝手な望みでもけしかけてしまったり、意外とシュールなんですよね。
子供の頃はそんな風に感じたことはなかったんですけれど、大人になると見方が変わるものです。

この本は、メモ帳格闘日記さまのレビューがきっかけで読みました。

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2005.07.31

『小説以外』 恩田陸

チェックしていた本を図書館で見つけて喜んだり、つまらなかったときには孫の代まで祟ってやると怒ったり、等身大の本好きさんのエッセイ。

推理小説作家は本について語らせると、マニアックなくらい読み込んでいて「ここまで深く理解できるような人じゃないと、やっぱりミステリは書けないのね」なんて思ってしまうもの。
でも恩田陸は、読んだ内容をころっと忘れてしまうことがあるなど、とても身近に感じました。
テーマ別にマイベストランキングを語ったり、とにかく本の話題が満載です。

この人は本当に本を読むことが好きで、いい本を沢山読んでいるからこそ、小説を書けるのですね。

私は永遠にただの一読者である


とは、まさに的確な表現だと思いました。

発表済みの作品が、どの本へのオマージュなのか。
元となった作品についても折に触れ種明かしされているので、裏話的な面白さがありました。
『夜のピクニック』の歩行祭は、実際に高校時代にあった行事なのですね。

他の作家の解説だったり、ドラマ化に寄せたコメントだったり、タイトルそのままに小説以外の文章を全て網羅した感があります。
そのため"エッセイ本"として書かれる文章とは、毛色の違ったものが混在しており、興味深いです。

この本は、Ciel Blueさまのレビューがきっかけで読みました。

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2005.07.13

『海猫』 谷村志穂

重く辛い描写が多く、読み終わった後、ずっしりきました。

最初は男女の恋愛の泥沼が中心でしたが、タミを中心とした女性たちの生き方の物語なのですね。
それぞれに背負ったものがあり、その重みに潰されそうになったり、重みを感じさせないように毅然と上をむいて歩いたり。
選んだ道は違えど、それぞれの葛藤を追求しています。

昭和30年代という時代設定なので、今の感覚からすると「こんなことが許されるだろうか」と疑問を抱いてしまう部分も。
前半メインとなる薫のキャラクターが、強さがあるようで急に弱くなったり、よくつかめませんでした。
美輝や美哉、そしてタミの方が、一本筋の通った性格で、思い浮かべられました。

第1章と2章で積み重ねてきたものが、畳み掛ける最後で芽吹きますが、このラストのために読むには、前半は辛かったです。

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2005.07.07

『まひるの月を追いかけて』 恩田陸

奇妙な安定感を保ち、ずっと続いてきた男1人と女2人。
そこに異母兄妹である私が関わっていく...。

不可解で奇妙な状況に、何があったのかという興味を沸かせる始まり方でした。

一つのことを追っていると、最後にひっくり返されて章が終わる。
分かったつもりがまた突き放され、雲を掴むような状態でした。
登場人物4人も存在感が希薄で、キャラクターが浮かんでこないんですよね。

思わせぶりだった割には結末が今ひとつで、物語に入り込めずに終わってしまいました。
霧が晴れていくように、その謎めいた世界がはっきりしてくればよかったのですが。
奈良めぐりの旅の描写が詳細なのですが、ストーリー上必然性が感じられませんでした。

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2005.07.01

『あさきゆめみしの世界 源氏物語ナビBOOK』 青木健

冒頭の「大和和紀INTERVIEW」が『あさきゆめみしPerfectBook』とほぼ内容が同じだったので、最初は似ているなと感じました。

同じ内容といえば、登場人物紹介のコーナー。
『PerfectBook』の方が絵をフルカラーで、しかも大きく活用していて、『あさきゆめみし』を堪能できる作りになっています。
一方『ナビBook』では、基本的に絵がモノクロで、あまり大きくスペースを割いて使いません。
絵は添え物で、解説の文章がメインという印象でした。

『あさきゆめみし』を堪能するという意味では、『PerfectBook』の方が一枚上ですね。

もちろん『ナビBOOK』にも独自性があります。
古文と現代語訳、そして『あさきゆめみし』の同じシーンを並べて味わわせる「源氏物語古文解釈」と「和歌講座」がその要です。

『あさきゆめみし』を読んだら、ぜひ原文も読んでほしいですね。


という大和和紀の意志を汲んでいるものと思われます。
巻末には「古語辞典」もつき、『あさきゆめみし』の解説というより、『源氏物語』の導入本というニュアンスが強い一冊でした。

この本は、黄昏草日記さまのレビューがきっかけで読みました。

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『はじめてだったころ』 たかぎなおこ

徹夜、バレンタインデー、迷子など、初めての思い出を綴ったエッセイ。

私もファーストフード禁止だったので、マクドナルドに憧れたエピソードに共感しました。
親のいないときにこっそり食べたポテトは、今では考えられないくらい美味しく感じられたものです。
禁止されているからこそ、美味しさも3割り増しなんですよね。
「今同じ店で焼肉を食べても、バイト最終日に食べたときの感動はない」という彼女の話にも、通じるものがあります。
アルバイト中は食べられなかったからこそ、心に残る美味しさだったんでしょう。

高校生の頃緊張しながら居酒屋へ行った話とか、初ドライブの車庫入れで困ったとか、同じ経験があったので頷きながら読みました。

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2005.06.27

『真夜中の神話』 真保裕一

夫や娘とのこと、頑なな姿勢を貫く謎の村など、思わせぶりなスタートでしたが、後半失速しました。
宗教についても科学的なアプローチについても中途半端で、題材を捌ききれず持て余しています。
他の作品のように、読んでいるだけで業界に精通するような掘り下げ方がなく、描写が表面を上滑りしていました。

最後の展開もありがちで、真保裕一の独自性がみられず、物足りない作品でした。

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2005.06.21

『はやいぞブンブン』 こもりまこと

色使いから、車のデザイン、構図や線まで、どれもが70年代のアメリカを感じさせる絵本。
ハッキリした赤色い車が、どのページも大きく描かれているので、車好きの息子は大喜びです。

ジャンプしたり、ドリフト風にカーブを曲がったり、蛇行したり、スリップで道から外れて泥まみれになったり、ドライバーの私としては「うーん...」と唸ってしまう運転内容。
それでもコミカルに楽しく見せているのは、この車の表情が無邪気だからでしょうね。

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2005.06.19

『パズル』 山田悠介

独りよがりな印象が否めません。

周りを全てライバル視し、友達とか協力といった言葉とは全く無縁の、超進学校のエリートクラス。
事件を通して本音をぶつけてみたり成長したり、というエピソードもお約束で、見え見えでした。

毎回身長・体重から始まる説明的な人物描写はステレオタイプで、頭に入ってきません。
教師の命を救うためにパズルを作らせる、という展開は必然性がなく、リアリティにかけます。

都合の悪いところは触れない、というところがあり、逆に犯人やパズルの意味がすぐに分かってしまいます。

↓↓↓以下、ネタバレあります↓↓↓
特に犯人たちが元同級生である以上、身長や体型もおなじくらいなはず。
まず見た目から、同年代の子供であることが見抜けるはずです。
そこにあえて触れていないのも、独りよがりだと感じました。

↑↑↑ネタバレ、終わり↑↑↑

装丁は悪くないんですけれど。

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2005.06.18

『ほんじょの天日干。』 本上まなみ

ペンタックスのMZ-3で撮影した写真に、文章を添えたエッセイ。
動物だったり虫だったり植物だったり、女の子が「かわいい♪」と思うものとは、ちょっとずれたところに対象があります。
でも彼女の自然体な愛情は伝わってきます。

「ほんじょのピンボケ主義。」という連載時のタイトルどおり、「んん~!?」というピンボケ写真がちらほら。
でもそこが彼女自身が撮ったものっぽくていいのかも。
月を追うごとに上達していくようで、後半にはハッとする写真もでてきます。

「きいろい春」の黄色尽くしの花たちは、彼女が"幸せの色"と呼んでいる思い入れが伝わってくる力作です。
冬に縮こまっていたのが、背筋を伸ばして、いろんなことに目を向ける力が湧いてくる、そんな気持ちが伝わってきます。

翌月の「ピンクの季節」は、濃淡さまざまなピンクが共演。
春の華やかさを思い出させてくれました。

「秋は何色?」では花はなく、葉っぱや木の実ばかり。
それがそれぞれ違った微妙な色合いで、並べてみると綺麗です。


彼女が独自に撮影した写真も味がありますが、天日恵美子氏の指導があった写真は、構図と仕上がりが全然違いますね。
さすがプロの写真家です。

そして、一つ勉強したこと。
ウコンって、ターメリックのことだったんですね。

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2005.06.13

『いとしさの王国へ 文学的少女漫画讀本』 角田光代他

私が子供の頃愛読していたのは『りぼん』で、中でも好きだったのが『星の瞳のシルエット』です。
"すすき野原の男の子"と"星のかけらの女の子"みたいな思い出が欲しいと、憧れてました。

かつて少女だった女性なら誰しもが持つ、そんな少女漫画への思い入れを綴ったのが、この本です。
正確には女性に限らず、嶽本野ばらなど男性陣も参加しています。

少女漫画というと、小学生までの、しかも女の子だけが読むものというイメージがあります。
ご都合主義のハッピーエンドというか、乙女の幻想というか、恋に恋する世界。
しかし、それだけではないようです。
恋愛だけでなく自分探しがテーマだったり、その歴史を紐解くと、テーマが幅広いことに驚きます。

ストーリー少女漫画の始まりは、手塚治虫の『リボンの騎士』だとか。
アニメでしか見ていないのですが、男女問わず楽しめる、素晴らしい作品ですね。

作品を知っていることが前提で語られるので、知っている作品がほとんどなかった私には、ちんぷんかんぷんな話が多かったのが残念です。

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『今週、妻が浮気します』 GoAhead & Co.

『電車男』の二番煎じ企画、という印象は否めません。

『電車男』がエルメスさんとの恋が成就するかという前向きなものなのに対して、本書は離婚すべきか否か。
テーマ自体も、読んでいてワクワクするものではありませんでした。

本質的に浮気に対する考え方が違っているのも、入り込みづらかった一因です。
夫婦や恋人間では色々な揉め事があるものですが、「浮気」という一線を越えたらもうアウト、という認識があります。
「妻」側にも言い分はいろいろありましょうが、いかなる理由であれその境界を越えてしまったら、もう別れしかありえないのです。
浮気されていながら(しかも今回は2度目)、「別れるか否か」と揺れ動くGoAhead氏と共感できませんでした。

『電車男』では、書き込む人同士が意見を交わしあい、皆が一つになっていく一体感がありました。
Q&A掲示板サイトの規約上、やりとりが質問者と回答者の1対1に限定されています。
読んでいて、皆で一つになる、という感覚が得られませんでした。

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2005.06.01

『陰陽寮 壱 安倍晴明編』 富樫倫太郎

道長についた安倍晴明と、伊周についた蘆屋道鬼の壮絶な対決を描いた小説。

謎の民「来流須」とは何者なのか?
謎めいた導入は興味深かったのですが、如何せん、グロテスクな描写が多かったのが残念でした。
敵側の横暴が残忍で凄惨で、肝心の妖術対決よりも目立ってしまった気がします。

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2005.05.31

『大きな活字の実用折り紙百科』 小林一夫

活字も図も大きいので、見やすいです。

「冠婚葬祭・年中行事・毎日の暮らしの中で役に立つ」というコピー通り、日常で使える作品が中心。
箸置き、茶托、楊枝入れ、グラタン皿、植木鉢カバー、筆入れなど、「こんなものまで作れるんだ」と驚きます。
生活にプラスアルファを、高度な折り紙を、という本で、あまり子供向きではないですね。

後半の「子、孫と」コーナーから、いくつか作って遊びました。
うさぎ、エビはデザイン性が高く、大人が見ても感心の出来栄えです。
ろうそくやお雛様、シャツなども、子供たちが喜んでくれました。

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2005.05.30

『グリコのおまけ』

コラムもありますが、メインは歴代のグリコのおまけの写真たちです。

現代の精巧なおもちゃに比べれば、初期のおまけはレトロでちゃちではあります。
しかしながら眺めていると、密やかな魅力をかんじてくるのが不思議です。

おまけという制約の中で楽しませようというアイディアや、造形の可愛らしさにはっとさせられるのでしょう。
同じモチーフのおもちゃでも、素材が違っていたり細かいデザインが違ったり、並べてみると面白いものです。
グリコのおまけを集めた記憶のない私ですが、眺めているだけで楽しいものだなと思いました。

巻末には、グリコのおまけ70年の年表もついています。
コレクションしていた方には、記憶を呼び覚ます懐かしい一冊になるのでは。

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2005.05.26

『もう、しませんから。 1』 西本英雄

『週刊少年マガジン』の漫画家を中心に、突撃インタビューしていく漫画。
夫は本誌で読んでいたはずなのに、なぜか単行本まで買ってきたので読んでみました。
そんなにこのコーナーが好きだったのか!?

普段は見られない漫画家の写真や、今ハマっているもの、知られざるエピソードなどが読めて、意外と面白かったです。
特に森川ジョージ、塀内夏子、加瀬あつしは、個人的に知り合いらしく、突っ込んだ取材ができています。
『はじめの一歩』について「今週は何ページ描いてるかな?」なんて、なかなかかけるものではないと思います(笑)

途中から、武蔵やシウバが登場したり、映画「ローレライ」の試写会など、話は思わぬ方向へ。
取材対象はバラバラですが、表面的な取材記事にはない、裏話を明かしていくというスタンスは統一されています。

笑いのある取材が面白かったので、絵が綺麗だとなおいいのに、と思いました。

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2005.05.21

『イチロー×北野武 キャッチボール』 北野武

テレビ番組の対談を再構成して、単行本化した本なのですね。

武は映画という切り口も交えていますが、基本的には2人とも野球という観点から話を膨らませています。
「へぇ~」と思う日米の違いもありましたが、分からない固有名詞も多く、それほど面白さは感じませんでした。

2人ともアメリカのベースボール礼賛で、日本の野球は全く駄目、と断じているのは、ちょっと引っかかりました。
メジャーリーグの方が魅力的な点が多いのは分かりますが、日本には全くいいところがないの? と聞き返したくなります。
熱狂的な日本の応援団に対する、イチローの冷ややかな切り方も淋しかったですね。

イチローは大変な自信家という印象を受けました。
それは感覚的なものではなく、完全な自分の「型」を作り上げてあるので、アジャストするだけで打てるという、根拠のある自信です。
ここまでできるからこそ、超一流なのですね。

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2005.05.18

『薫大将と匂の宮』 岡田鯱彦

「宇治十帖」のその後を描いた表題作、新解雨月物語と銘打った作品など、古典を題材にした短編集。

表題作は、紫式部が安楽椅子探偵として活躍するミステリ仕立てです。
清少納言との推理合戦といい、設定は面白そうだったのですが、手放しで入り込めない違和感を感じてしまいました。
「宇治十帖」の登場人物たちを、勝手に変死させてしまっているからです。
架空の人物ならともかく、主役級の人物だったがために、抵抗がありました。

『源氏物語』を扱った収録作品では、「「六条の御息所」誕生」の方が楽しく読むことができました。
「夕顔」で「六条御息所」の名が一度も出てこないのは何故か、という学術的な問題を、小説という形で分かりやすくアプローチしています。

清少納言の可愛らしい一面を感じたのが「艶説清少納言」です。
素直な一面を見せる彼女に、親しみを感じました。
相手役である則光の、当時としては珍しい無骨で真っ直ぐな純情さも相まって、微笑ましい作品です。

Amazonのレビューは、こちらから。
Booklogのレビューは、こちらから。

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2005.05.14

『コイノカオリ』 角田光代他

6人の作家による、6つのラブストーリー。
タイトルの響きと、装丁がとても美しい本です。
恋愛小説はあまり読まないため、知っている作家が一人もおらず、新鮮でした。

一番印象に残ったのは、生田紗代の「海のなかには夜」。
だれに知られることなく、ひっそりと進行するサークル内恋愛。
好きなのに、いっしょにいるとどうしようと困ってしまう、そんな切なくてもどかしい気持ちがよく伝わってきました。
体育会系ではないので何を練習するでもなく、飲んだり、肝試しをしたりする、遊びがメインの合宿。
がやがやして、まとまっているようなバラバラなような、学生時代特有の雰囲気に、懐かしさを感じたのかもしれません。

ぽっかりと陽だまりのような心地よさを感じたのが、宮下奈都の「日をつなぐ」。
初めての育児に打ちのめされそうになる真名に、共感するものがありました。
一歩間違えると暗くなりそうな中で、ほっこり暖かいのが、お豆のスープをことこと煮込むシーン。
修ちゃんの不器用さに、素朴なお豆のスープが効果的に挿入され、優しい読後感でした。
ラストがどうなるかは明記されていませんが、私の中ではハッピーエンドになっています。

栗田有起の「泣きっつらにハニー」は、よしもとばななを彷彿とさせました。
男性ながら"ママ"と呼ばれる設定や、彼のお店の遍歴。
職業を聞くと引いてしまいそうな女性たちの、実は素敵な内面を描いているところが重なったのだと思います。

この本は、寝ていられるのになぜ起きる? さまのレビューがきっかけで読みました。

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2005.05.13

『ぐりとぐらの1ねんかん』 なかがわりえことやまわきゆりこ

6月だったら雨、8月だったらテントでキャンプ、11月なら落ち葉。
1年12ヶ月を1月づつ、特徴的なお花や出来事で綴った絵本です。

3月はチューリップ、12月はポインセチアといった、植物の変化も細やかです。
大型本なので、隅々まで丁寧に描かれた絵を堪能できます。
けれどもその絵は、風景を写真に切り取ったような静的なもの。
ストーリー性には欠けていました。

子供の頃好きだった、ぐりとぐら。
もっと面白い、わくわくする展開が魅力だった気がするのですが。

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2005.05.10

『時の旅人』 長野まゆみ

久々に、まあまあな長野まゆみ作品でした。
新しい作品に多い、ボーイズ・ラブ色が薄かったためです。

時空を超える話なので、時代設定が過去・現代・未来と変わっていきます。
それでいて作品全体が変わらぬ空気を保っているのは、緩めの旧仮名遣いでの描写ゆえでしょう。
直接的に表現せず、周りを朧に掠めながら浮かび上がらせていく手法が、幻想的な雰囲気をより強めていきます。
現代の地下鉄でありながら、異世界が舞台だった他の少年たちが登場しそうな気がしました。

とはいえ、満足というには物足りなさも。
鉱石や食べ物、少年社会の独自のルールや機微が、もっとつぶさに描かれているとよかったです。

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2005.05.06

『雑草の生活』 中嶋朋子

中嶋朋子が、文・絵・写真全てを担当したエッセイ。
ちょうど結婚するところで、後半は妊娠と育児の話題が中心です。

「北の国から」の撮影をしていると、「都会は駄目、自然が少ないわ」と考えるのかなと思ってしまいます。
ところが彼女はその一歩先を行っていました。
北海道のような大自然は、確かに優しい懐を持っているけれど、一方でとても厳しい一面も持っているのだ、と言います。
そして都会にいても、雑草やすくすく伸びた庭木に自然のパワーを感じられるのだ、とも。

全てがポジティブでハッピーなトーンだったので、やや表面的な感じはしました。
エッセイはもっと色んなトーンがあって、普段知ることのない内面の思考を感じられるものだと思うので。

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2005.04.28

『安倍晴明《天人相関の巻》』 小松左京/高橋桐矢

安倍晴明を主人公とした他の小説と、大きく異なる点が二つあります。

一つ目は、晴明が若いということです。
初登場は、10歳の水干姿。
まだあどけなく、母親を思い出すなど、精神的にも幼いです。

その後年齢は重ねていきますが、内面は未熟ままの印象です。
陰陽師としての確固たる地位と、強靭な精神力を持ち、周りを翻弄してしまう他の晴明像とは違っています。

二つ目は、現代の話が平行していることです。
平安時代の枠に収まらず、現代の阿倍康郎なる青年とのリンクが、変わっています。

安倍晴明の話というより、彼の出生伝説と現代の阿倍康郎の生き方のほうが、メインのようです。
安倍晴明のエピソードを読みたいという方には、ちょっと物足りないかも。

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2005.04.08

『こんにちは、長くつ下のピッピ』 アストリッド・リンドグレーン作

有名な作品でありながら、手にするのは今回が初めてです。

奔放で、型に嵌まらず、口うるさい両親がいないために、自由に生きるピッピ。
ちっとも優等生ではなく、どちらかというと大人たちから敬遠されそうなタイプです。
といっても野放図なのではなく、何でも自分でやってのける自立性もあります。

怪力だったり、一緒に住んでいるのはウマと小さなサルだけだったり、意外な設定と予想のつかない展開に驚きました。

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2005.04.03

『作家の犯行現場』 有栖川有栖

実際に推理小説に登場した場所や、事件が起きそうな場所を巡っていくエッセイ。
"橋""桜"といった漠然としたモチーフから、横溝正史作品の舞台のように具体的な場所まで、幅広く取り上げられています。

作者自身に教えてもらったという『霧越邸殺人事件』の霧越湖のモデルや、推理作家協会会員のみ利用できるミステリー文学資料館の地下書庫など、有栖川有栖ならではの人脈・チョイスも活きています。

作品の記述と絡めた具体的な紀行文あり、半ば小説風のエッセイあり、そして取材がきっかけで生まれた小説あり。
ただ「行って来ました」ではなく、趣向も凝らされていました。

行って見たいと思ったのは「とりっくあーとぴあ那須」ですね。
絵に触れ、写真を撮り、入館者も遊べるというのが魅力です。

『珍日本紀行』でも紹介されていた軍艦島、安倍晴明ゆかりの天社土御門神道本庁も登場。
最近読んだ本と関連した場所は、タイムリーに感じました。

贅沢を言うならば、写真はカラーがよかったですね。

この本はやっぱり本が好き~LINの読書日記~さまのレビューがきっかけで読みました。

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2005.03.31

『ROADSIDE JAPAN-珍日本紀行』 都築響一

普通のガイドブックとは全く違った切り口の、日本縦断紀行。

いわゆる観光地も含まれているのですが、収録されている殆どが、何気ない街の変わった建物や風景。
観光コースには絶対に含まれないような、珍スポットが目白押しでした。

小奇麗で数多の観光客が訪れる場所と違って、俗悪だったり、下品だったり、雑多だったり...。
一風変わったセンスに驚き、引いてしまう場合もありましたが、実際に見に行きたくなる場所もありました。
膨大な写真の中から、自分の感性に響く場所をピックアップして旅すると面白そうです。

借りてきたのが大型本だったので、かなりのボリュームでした。
「東日本編」と「西日本編」に分割された本もあるようです。

この本はどこまで行ったらお茶の時間さまのレビューがきっかけで読みました。

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2005.03.30

『七人の安倍晴明』 夢枕獏編著(単行本)

文庫と重複する内容については、割愛します。
今回は、単行本にのみ収録されている、岡野玲子の「玄象といふ琵琶 鬼のために盗らるること」について。

小説かと思っていたら、漫画なのですね。
夢枕獏原作なのでしょうか。
ストーリーは同名の小説と、似たような展開です。

漫画のほうがおどろおどろしく、ややグロテスクなところがありました。
文章だとさらりと流せても、絵だとリアルに映ってしまうからかもしれませんね。

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2005.03.28

『うさたま見聞録』 中村うさぎ 倉田真由美

読んでいると間逆の性格に思える二人が、毎回一つのテーマについて語ったエッセイ。
中村うさぎの毒舌と自虐ネタは、本で読むほうがソフトになっていますね。
テレビで声に出して話すと、ちょっと主張が強すぎるかなという感じがします。

整形、セレブ御用達のコスメなど、自分への投資は惜しまないいけれど、収入にはシビアな、中村うさぎ。
お肌のお手入れといえば化粧水のみ。
出費には厳しいけれど、ギャラを聞かずにOKしてしまう大らかさの、倉田真由美。
正反対の2人なので、突っ走りがちな中村うさぎを、倉田真由美の漫画が上手く抑えて中和していました。

シャーロック・ホームズも好きですし、たぶん私は倉田真由美寄りの性格なのでしょう。
時折、中村うさぎが赤裸々過ぎて、引くテーマもありました。

『七人の安倍晴明』に登場した、晴明神社の話題がタイムリーでした。

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2005.03.25

『七人の安倍晴明』 夢枕獏編著(文庫)

全てが安倍晴明を主人公とした小説かと思いきや、安倍晴明中心ではなかったり、コラムだったりが混じっていました。
陰陽師について勉強にはなりましたが、タイトルからは7作家7通りの安倍晴明を期待していたので、少し残念です。

高橋克彦の「視鬼」は、70歳という高齢の安倍晴明が主人公の小説です。
一段上の高みから見下ろし、口元に皮肉めいた微笑を湛える風貌。
一筋縄ではいかないけれど、冷酷に徹するわけでもない。
権力争いから一歩離れているようで、権力者を邪険にするわけでもない。
夢枕獏の『陰陽師』シリーズに通じる、年老いてもどこか味のある安倍晴明に仕上がっていました。

田辺聖子の「愛の陰陽師」は、『宇治拾遺物語』から安倍晴明のエピソードを紹介しています。
「式神で殺すことができるのか」と試されれば、冷酷に殺してみせる怖さと、呪いをかけられた若い少将を助ける、優しい一面。
安倍晴明の持つ、多面的な魅力を余すところなく伝えています。
短いお話なので、もっと彼女の描く安倍晴明を読みたくなりました。

斬新だったのが、加門七海の「晴明。-暁の星神-」です。
先に紹介した3作品の安倍晴明は、自らの能力を制御し、のらりくらりとかわす術を身につけてた、クールな性格です。
ところが彼女の安倍晴明は、まだ若く未熟で、己の能力と存在意義を把握し切れてない感じがします。
荒々しく、感情の起伏も激しく、暗く、禍々しい空気を纏っていました。
途中までの抜粋でしたので、この後どのように成長していくのか、興味の湧くところです。

澁澤龍彦の「三つの髑髏」は、安倍晴明を秘密警察になぞらえるなど、面白い分析を披露しています。
花山院メインでありながら、最後に微笑む安倍晴明が、なんとも魅力的です。

安倍晴明には妻がいたとの記述が、いくつかの作品で見受けられましたが、夢枕獏の作品では登場しませんね。
彼の筆ではどのように描かれるのか、読んでみたい気がします。

今回は文庫を読みましたが、単行本の方ではラインナップが変わっているようです。
岡野玲子「玄象といふ琵琶 鬼のために盗らること」を読むために、単行本を探したいと思います。

この本は、やっぱり本が好き~LINの読書日記~さまのレビューがきっかけで読みました。

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【2005.3.30 追記】
単行本のレビューをUPしました。

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『せきたんやのくまさん』 フィービとセルビ・ウォージントン

石炭屋という職業が子供には分からないようで、なじみにくかったですね。

『ゆうびんやのくまさん』『パンやのくまさん』では、お客さんとの優しいやりとりが、ほのぼのさせてくれました。
くまさんがお店や持ち場に留まらず、様々な場所へ出かけていくのも楽しかったです。
その職業に対し、好意的な気持ちが芽生えるようなストーリーでした。

今回は、そういった心の交流や、場面の切り替わりがありませんでした。
コークスと石炭置き場は、暗く、小物も少ないので、見ていてワクワクしませんでした。
上記の2冊に比べると、今ひとつかなと思います。

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2005.03.24

『ゆうびんやのくまさん』 フィービとセルビ・ウォージントン

今日はまさにクリスマス・イブ。
葉書を送ったり、小包を届けたり、人々の暖かさが一番伝わる日でもあります。

『パンやのくまさん』同様、朝早く起き、くまさんは仕事に出かけます。
ひとつひとつの作業を誠実に、丁寧にこなしていくくまさん。
毎回、どんな仕事で、一日をどのように過ごしているのかが分かります。

解けかかった小包は、丁寧に包みなおしてあげる優しいくまさん。
配達に来たくまさんを嬉しそうに迎え、歓待してくれる人々。
温かい読後感と、小物まで細かく描かれた、可愛らしい絵が魅力です。

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2005.03.23

『くぐつ小町』 加門七海

和歌のリズムような、古典そのもののような固めの文章が、やや難解でした。
全文振り仮名つきで読みやすかった『常世桜 地神盲僧、妖ヲ謡フ』と比べると、ずいぶん読みにくかったです。

小野小町といえば絶世の美女。
在原業平といえば『伊勢物語』。
色好みのからりとした男性を思い起こします。

しかしここいるのは、そんな2人ではありません。
在原業平は、友の暗き変化に戦き、恐れを感じているばかりで、恋どころではありません。
小野小町も美しいと噂は立ちますが、それ以上に父・小野(たかむら)の恐ろしい思惑が込められた、陰のある存在になっています。

有名どころが登場していながら、今までの人物感とはまるで違った、冥く妖しい世界を生み出す伝奇小説でした。

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2005.03.19

『人魚の鱗』 産経新聞文化部編

産経新聞掲載の読みきりを集めた"ファンタジーの宝石箱"vol.1。
基本的に同じ作家の再登場はなし。
1話も短く、色んな作家の作品を読むことができます。
vol.1は全46作家、vol.2『夜の翼』は全45作家、vol.3『タイム・バード』は全47作家、vol.4『ハッピーコール』は全12作家。

加門七海の表題作は、キラキラ光る透き通った"あるもの"を、人魚の鱗に例えたのが上手いですね。
短い枚数なのに、ライオンの心理描写がよく伝わってきます。

ほっという読後感がよかったのは、志茂田景樹の「ねぼけキララ」。
見た目で判断してはいけないのでしょうか、あの派手な衣装と妙な言動からは想像のつかない作風でした。

短い中にストーリー性と謎を感じたのは、佐藤さとるの「向かいの岡野向こうがわ」。

映像が美しく、家族の暖かさを感じたのは、横森理香の「空を見上げて」。

他にも、あさのあつこ、松谷みよ子、阿刀田高など、豪華な顔ぶれが共演しています。
作品によって当たりはずれがありますが、短い枚数なのにストーリー性を感じる、描写力のある作品がよかったです。
コンセプトが"思わず元気が出て明るくなるお話"なので、どれも読後感はよいです。

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2005.03.17

『生首に聞いてみろ』 法月綸太郎

彼の作品を読むのは、いつ以来でしょうか。

石膏像の首が切り取られたのは、そのモデルへの殺人予告なのか。
調査と推理、新たに判明した事実から更なる謎が生まれ、また推理を重ねていく。

ストーリー展開は淀みなく、最後に畳み掛ける論理展開も上手いです。
ペダントリーも無駄に長くなく、内容が物語に活かされていました。
よくできた推理小説です。

けれど、特別のめり込むということもありませんでした。
やや淡々としていて、物語に入り込みづらかったからでしょうか。
ミステリとしてよくできているのですが、惹きつけられる"特別な何か"まではなかったかな、と感じました。

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2005.03.13

『ももこの70年代手帖』 さくらももこ

彼女は子供の頃の思い出話をしているのが、一番面白いですね。

60年代から70年代にかけて、テーマ別にまとめられたエッセイ。
取り上げられているのは、事件、ファッション、歌手、アニメ、歌番組、漫画などです。
当時のアイテムや人々の写真が豊富に収められているので、同世代の方には懐かしいのではないでしょうか。
私には分からないものもありましたが、「へぇ~、これも70年代だったんだ」とハッとさせられることも。

爆笑ではないですが、まぁまぁ楽しめました。

ご本人と父ヒロシの写真もあります。
「これが本物の!」とミーハーな反応をして見たり(笑)
さくらももこは、足が細くてすらりと長いなと思いました。

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2005.03.12

『楽しい犯罪』 佐野洋

自分たちを騙した人、迷惑をかけてきた人、困らせてきた人に、ちょっと仕返しをしてみせる。
それは鍵開け名人がいるからこそなせる、"いたずら"なのです。

メインとなる3人の女の子があっけらかんとしていて、軽快です。
一話ずつが短く、テンポよく読み進められます。

ただ、ひっかかる"いたずら"もいくつかありました。
「被害者の側に何らかの非が」あり、「主人公が、その犯罪を楽しんで実行する」お話だと、あとがきにあります。
確かに"いたずら"される人には、主人公の友人を裏切ったなど、一応の理由があります。

しかし、納得できないケースもあります。
自分たちが悪くて注意されたのに、相手のあらを探し仕返しするなんて、自分勝手も甚だしいです。
鍵を無断で開け、他人の秘密を除く行為自体が、かなり問題です。
それに値するような重大な理由でないと、共感は難しいですね。

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2005.03.07

『オーデュボンの祈り』 伊坂幸太郎

外界と久しく交流がなく、独自のルールで営まれている、不思議な島。
そこには、人語を操る案山子が登場します。
しかも、ただしゃべるだけでなく、彼は未来が分かるというのです。

一風変わった設定と、不可解なエピソード。
あちこちに散りばめられた何気ない伏線が、最後に繋がりを持って一つの結論を描き出す。
いかにも彼らしいスタイルの作品でしたが、もう一つ掴みが弱かったです。
『ラッシュライフ』のように、ぐいぐいと作品の中に引き込むパワーが足りませんでした。

田中、伊藤、安田など、よくある名前が多いのも気になりました。
ただでも島民たちは浮世離れした雰囲気をまとっていて、具象的ではありません。
島の人々と会っていくだけのシーンが殆どなので、ありふれた名前だと、登場人物が印象に残りづらいのです。

デビュー作ということで、まだ練りや筆力不足といったところでしょうか。

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2005.03.03

『ツチヤ学部長の弁明』 土屋賢二

この方の笑いは、綾小路きみまろに通じるものがありますね。
女性を褒めているようで、実は貶していることがほとんど。
それが不快ではなく、むしろその鋭い観察力と飛躍した比喩に、思わずにやりと笑ってしまうのです。

冒頭の講演が面白かったのですが、残りのエッセイは、当たりと外れがありました。
学部長に就任して、大忙しの中執筆したものをまとめたとの事で、質にムラがあるのかなと思いました。

「小泉首相の失敗に学ぶ」の女性論は、的を得ていて面白かったです。
いしいひさいちの漫画は、鋭い洞察を笑いに変えてしまうところなど、彼のエッセイにぴったりですね。

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2005.02.28

『クリスマス・クリスマス』 角野栄子

リボンが十字に架けられ、クリスマスカードの添えられた、素敵な表紙デザインです。

クリスマス・ツリーの由来とは。
サンタクロースのモデルとは。
いつから赤い洋服でイメージが定着したのか。
スウェーデンとフィンランドの、サンタクロースの家訪問記。
そして、世界のクリスマス。

クリスマスの歴史や由来、そして現在のお祝いについてまとめられた一冊です。
知識は身につきますが、わくわく楽しいというより、子供向け勉強資料といった趣です。

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2005.02.23

『発火点』 真保裕一

前半の不愉快な展開を耐え忍んだのに、結末に納得がいかず、不満がいっぱいです。

まず、主人公の性格に一貫性が感じられません。
短気で、自己弁護にだけは長けていて、自分勝手な敦也。
それが突然、人の話に耳を傾け、悪いことには謝罪するという豹変振り。
心理変化によるものとしたいのでしょうが、話の流れから伝わってこないので、単に違和感を感じます。

後半の展開も、敦也の独りよがりな自己満足としか思えず、感動を誘うどころではありません。
謎の引っ張り方はよかったのですが、実際明かされた事件の真相が、期待に応えてはくれませんでした。

タイトルもピンと来なくって、作品全体で何が言いたかったのか、何を描きたかったのかが不明です。
文章は上手いので、長さを感じずに読めたのが救いですが。

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