『誘拐』 本田靖春
文藝春秋読者賞、講談社出版文化賞受賞作。
「吉展ちゃん事件」を扱った小説です。
名前だけは知っていたものの、事件そのものについては全然知らなかった、私。
警察が捜査で掴んでいた情報とか、小原のこうどうなどが詳細に描かれており、なんという凄まじい事件だったのかと、改めて恐ろしく感じました。
逆探知であるとか。
犯人からの電話を録音するであるとか。
誘拐事件の捜査で、今では当たり前のことが、まだ確立していなかったという当時。
2年経っても、犯人を特定できず、吉展ちゃんの安否も明らかに出来ない。
あまりに杜撰な仕事ぶりに、憤りと空恐ろしさを感じました。
そこで現れるのが、ドラマ「刑事一代」の、平塚八兵衛部長刑事。
ほとんどの捜査員が、白とみなしていた小原保について、一から自分で捜査を始めていく・・・。
前半の、関係者の事情を描いているところでは、その口調に眉をひそめました。
この時代の小説は、どうしてこんなに下衆な書き方をするんだろう、といつも感じます。
しかしそこを過ぎれば、下品な気配は薄れ、目が離せなくなります。
服役中の小原の活動について、最後に触れられていますが、冷ややかな気持ちで読みました。
小原の人権、小原の人権というが、吉展ちゃんの人権はどうなるんだい?
という台詞に、強く共感しました。
またトニー谷長男誘拐事件、三億円事件もちらりとだけは触れられました。
平塚八兵衛を描いた『刑事一代』も、読んでみたくなりました。
【2009.11.9 追記】
佐々木嘉信『刑事一代 平塚八兵衛の昭和事件史』読了しました。
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