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2008.12.15

『弘海 息子が海に還る朝』 市川拓司

家族愛のあったかさに、じんわりくる物語。
離別を予感させるスタートに、最初から切なくさせられました。

愛情一杯の両親と、優しいお兄ちゃんに、しっかり者の妹。
ごく普通の幸せな日々を営んできた岸田家に、変化が起きます。

息子の弘海が、不可解な身体的変化を遂げ、どんどんと体調を崩していくのです。

主人公の岸田パパは、どこにでもいる普通のお父さんです。
ばりばりのエリートでも、逞しく家族を引っ張る決断力の人でもありません。
途中で出会っていく、市井家と対照的です。

だからこそ、弘海のことに悩んで、考えて、すぐに決断なんてできずにいる。
慎ましい生活の中から、自分のできる精一杯で、何とかしようと努力していきます。

そんな岸田パパの姿に、子育てをしている普通の親として、共感していきました。

弘海自身も、パパ似なのか、強く主張するというタイプではありません。
しかしじっくりと自分の変化を受け止め、考え、自分の未来を切り拓いていきます。
心配してくれた家族たちのことを、何よりも大事に考えながら。

気丈な妹の美和の、兄を思う気持ちも暖かく、作品全体が愛情に満ち溢れていました。

岸田パパのモノローグが、優しくて、泣けました。

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