『影踏み』 横山秀夫
リアリティに溢れる他の作品とは、雰囲気が異なりますが、一つの読み物として面白かったです。
刑務所から出た、真壁修一の頭蓋に響いたのは、「修兄ィ」の声。
死んだ双子の弟、啓二の意識が、頭の中に住み着いているのでした。
修一は、自分が逮捕されるきっかけとなった事件のことを、再び調べなおし・・・というお話。
死んだ弟の声が、内耳に響く。
最初は、このSF的な設定が、リアリティの横山秀夫っぽくないな、と感じました。
物語り全体としても、他の横山秀夫作品とは、少し違った印象があります。
リアリティの追求ではなく、どちらかというと現実離れした方向性の、ハードボイルド世界だからでしょうか。
同業者のツテや、対立する警察官。
修一を中心とする人間関係の中で、事件は起きていきます。
一話完結で、さくっと解決するものの、関係者ばかりが犯人であるという、やるせない感じが続いていきます。
そもそも啓二がなぜ、亡くなったのか。
修一はなぜ、深夜の民家に入って現金を盗む「ノビ」にならなければならなかったのか。
そして今もなお、久子を泣かせ続けなければならないのか。
修一と啓二の関係からして、簡単には答えられない問題が山積です。
横山秀夫に期待する、重厚なリアルさ、というのとは違っていましたが、読み物として面白かったです。
単に「すり」「空き巣」などと一くくりにせず、手口による違いを、詳細に描き分けているところは、横山秀夫らしいですね。
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