『少年アリス』 長野まゆみ
長野まゆみという作家の魅力を伝えようとするとき、自分の語彙力のなさに愕然とします。
拙いながら分析してみると、以下の3点にその原点がある気がします。
一つは、主人公の少年たちの魅力。
粋な会話、独自のルール。
どこかにいそうでいない少年たち。
少年=鳥や猫への見立て。
容姿の表現も「白磁」という単語を使うなど、浮世離れしたような、タイムスリップしたような世界が広がってゆきます。
二つ目は、旧仮名遣いを多用している点。
現代の口語とは違った、深みのある文体になっています。
また、普段はひらがなやカタカナで表記される単語たちも、漢字で表現されると、想像力が刺激されるのです。
「言葉」を使った小説ならではの面白さだと思います。
三つ目は、装丁です。
(「言葉」の魅力を強調しておいてなにを、と思われる方もいるかもしれませんが...。)
長野まゆみには「言葉」の世界を楽しんだあとに、彼女の「イラスト」を楽しむことができます。
自分で想像を膨らませた物語の世界と、たがうことない画像が見れるのです。
原作を読んだ後、映画を見てさらにハマった、という感じでしょうか。
他に類を見ない、独自の世界を築いている長野まゆみのデビュー作がこの『少年アリス』です。
「少年」と「アリス(少女)」を組み合わせたタイトルからして、長野まゆみらしいと言えます。
物語は、睡蓮の開く音がする月夜、蜜蜂が飼い犬の耳丸を連れ、アリスの元を訪れるところから始まります。
学校に置き忘れたという、兄さんから借りた36色の色鉛筆を取りに、夜の学校へ忍び込むというのです。
二人は、中味を刳り貫いた烏瓜に螢星を入れ、それを提灯として、理科室を探検しようとします。
そこで二人が見たものは...。
外界の音がすべて遠のき、本の世界に没頭できる作品です。
特に女性に読んでいただきたいですね。
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