2015.08.27

『本屋さんのダイアナ』 柚木麻子

キャバクラで働く母親に育てられた、大穴(ダイアナ)
本物志向の両親に育てられた、優等生の彩子。

全く正反対の2人が、友情をはぐくみ、それぞれの道を歩んでいく物語。

冒頭から引き込まれる作品でした。

小学校で育まれる、2人の友情。
お互いがお互いにあこがれる、ないものねだりの関係が、初々しく、ほほえましかったです。

2人の共通の趣味である、読書にまつわるやりとりが、また魅力的。
『赤毛のアン』を中心に、本とストーリーがしっかりと結びついている作品でした。

中学、高校、そして大学と、ささやかなすれ違いから、別々の道を歩む2人。
それぞれの年齢にあった葛藤と、関係の変化がまたうまかった。

ダイアナから離れた後の彩子の描写は、やや薄い感じ。
特に、大学でのエピソードは、内容のわりに軽い扱いな気がします。

彩子よりも、ダイアナに魅かれながら読みました。

2015年本屋大賞4位というのがきっかけで、手にした本。
内容を説明しづらいけれど、引き込まれる魅力がある。
こういうタイプの作品に出会えるのが、本屋大賞のいいところだと、個人的には思っています。

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2015.08.26

『コンビニたそがれ堂 星に願いを』 村山早紀

シリーズ第3弾。
「星に願いを」「喫茶店コスモス」「本物の変身ベルト」の3編。

「喫茶店コスモス」がよかったです。

香るコーヒーと共に、ゆっくりと手繰り寄せられる思い出。
送る人、送られる人、双方の思いがあたたかく、じーんときました。

シリーズがすすむにつれ、ひとつひとつの話が長くなってきています。

コンビニの噂や、店員の正体など、詳細かつはっきりと描かれるようになりましたが、言わずもがなな気も。
ほのめかすくらいがちょうどいいように感じます。

「星に願いを」と「本物の変身ベルト」は、ファンタジー色が強かったです。

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2015.08.24

『ぼくの名はチェット』 スペンサー・クイン

リトル探偵事務所に持ち込まれた、女子高生の失踪事件。
いちどは帰宅した娘が、再び姿を消して……。

名犬チェットと探偵バーニーシリーズ第1弾。

とにかくチェットの描写が愛くるしかったです。

犬視点の物語は、ほかにもあります。
その場合、人間の言葉を完ぺきに理解して考えられる、擬人化された存在であることが多いように思います。

チェットは違います。

興味のわくターゲットに夢中になって、途中から会話を聞いていなかったり。
聞こえていても、言い回しの意味が分からず、勘違いしたり。

自分の見聞きしたことを、うまく伝えられず、そのまま放置してしまったり。

生き生きとした、生身の犬という感じで、尻尾をぶんぶん振る愛らしい姿が、脳裏に浮かんできました。

チェットが知ったこと(ただし、バーニーには伝えられていない)によって、読み手には真相が見えてくるので、やや展開にもどかしさを感じました。

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2015.08.23

『本なんて! 作家と本をめぐる52話』 キノブックス編集部・編

旧仮名遣いの時代から、現代の作家まで、幅広く集めたエッセイ集。

執筆陣は、以下の51人。

芥川龍之介、朝井リョウ、浅田次郎、荒川洋治、有栖川有栖、池内紀、石川淳、伊集院静、いとうせいこう、稲葉真弓、江國香織、小川洋子、開高健、角田光代、紀田順一郎、草森伸一、久世光彦、窪田空穂、小池真理子、最相葉月、椎名誠、庄司浅水、須賀敦子、鈴木清順、園子温、高山文彦、田村隆一、多和田葉子、土屋賢二、出久根達郎、寺田寅彦、寺山修司、常盤新平、栃折久美子、外山滋比古、長嶋有、西村賢太、萩尾望都、藤野可織、穂村弘、堀江敏幸、万城目学、宮内悠介、宮沢章夫、室井佑月、室生犀星、森茉莉、山田風太郎、夢野久作、夢枕獏、四方田犬彦。

時代的なものはもちろん、現代でも、こういう機会がないと読むことはない執筆者に、たくさん出会えました。

が、描き下ろしではなく、既出の文章を集めたものなので、目当ての現代作家は、既読の文章が多く、残念でした。

良かったのは、以下の6つ。

角田光代「挙動不審になりがちな」
草森紳一「あとからゆったりと倒れる本の群もあるのだ」
土屋賢二「書店に行くとなぜトイレに行きたくなるか」
有栖川有栖「書斎の猫」
藤野可織「本棚」
荒川洋治「つか見本」

「挙動不審になりがちな」と「書店に行くとなぜトイレに行きたくなるか」は、どちらも作家としての立場を描いたもの。
書店の"お客さん"でもあり、自らの著書が置かれている"関係者"でもあるという立場を、ユーモラスに描いていて、楽しかったです。

「あとからゆったりと倒れる本の群もあるのだ」は、本だらけの部屋ですったもんだする姿が、なんともおかしかったです。

「書斎の猫」と「本棚」は、どちらも自宅の本棚の話。
せつない話とユーモラスな話で、雰囲気は真逆ですが、どちらも面白かったです。

「つか見本」は、一般には出回らない"つか見本"の話で、興味深い内容でした。

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2015.08.17

『コンビニたそがれ堂 奇跡の招待状』 村山早紀

シリーズ第2弾。
「雪うさぎの旅」「人魚姫」「魔法の振り子」「エンディング~ねここや、ねここ」の4編。

今回も、じわっと泣けました。

前作に比べると、どうしようもない別れと向き合う、あたたかい中に切なさの強い話が多かったです。
ファンタジー色も強く、児童書らしさを感じました。

「人魚姫」は、ちょっと異色で、ホラーのよう。
ラストがどうなってしまうのかと、ちょっと怖かったです。

特に切なかったのは、「魔法の振り子」。
予測のつく真相がつらく、外れてくれたらいいのに、と思いながら最後まで読みました。

「エンディング~ねここや、ねここ」も、変わってしまった、共にはいられない自分に気づいている、ねここの切なさがありました。

全体的に、コンビニたそがれ堂の存在は、控えめな印象。
視点人物の思いを、じっくり描いている気がしました。

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