2015.04.20

『ハケンアニメ!』 辻村深月

売上No.1に与えられる称号"覇権"を手にするのは、どのアニメか。
アニメ業界で奮闘する人々を描いた、お仕事小説。

『anan』連載の書籍化。

面白くて、一気読みでした。

職種も性格も異なる面々ですが、全編にあふれているのは、アニメへの愛。
仕事は過酷だけれど、いいものを届けようとがむしゃらな人々に、胸が熱くなります。

アニメの制作費の高さや、かかわる人々の多さなど、驚かされることも多々ありました。
アニメそのものだけでなく、フィギュアやおもちゃ、聖地巡礼と、関連するビジネスに関しても、学ぶことが多かったです。

いろんな役割を描いているので、アニメ業界が身近に感じられるようになりました。

奮闘する人々と、共に熱くなり、時にはじーんと涙することも。
読後感もいい、素敵な物語でした。

章ごとに異なる女性を主人公に据え、関係しながら展開するストーリー。

すべての事情を知った上で再読してみると、「このセリフの意味するところは……!」と、ちりばめられたつながりを、改めて楽しめました。

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 【既読の辻村深月作品】
『島はぼくらと』
『凍りのくじら』
『鍵のない夢を見る』
『9の扉』
『とっさの方言』
『エソラ vol.7』

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2015.04.19

『追っかけ屋愛蔵』 海老沢泰久

口入れ屋に代わって、逃亡した奉公人を、期限内に探し出す。
追っかけ屋を生業にする愛蔵には、ある目的があった……。

「追っかけ屋 愛蔵」「夜鷹蕎麦」「隠れ念仏」「人殺し」「一刻者」「恋日和」の6編。

逃亡した人間を見つけ出して、怒っている雇い主に引き渡すのが、追っかけ屋の仕事。
もめごとの匂いがしますし、きつい話になりそうなものですが、不思議と暗さはなく、温かみのある物語でした。

まず、愛蔵と新九郎の人柄が、いい。
ただ闇雲に捕まえるのではなく、真の理由を見極めていくので、その行動には、人情味があります。

依頼主である口入れ屋も、筋の通った仕事をしてくれるので、頼もしかったです。

雇い主の言いなりにならず、人として外れないので、清々しいんですよね。

逃亡者を探すため、あちこち歩き回るので、知っている地名がたくさん出てきます。
その描写が具体的で、現代と江戸時代の町の違いが、面白かったです。

初めて読んだ作品でしたが、遺作なのだそう。

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2015.04.17

『ダブル・フォールト』 真保裕一

初めて殺人の弁護を担当することになった、新米弁護士の主人公。
被告人を全面的に信用できないまま、裁判は進んでゆく……。

殺意に関して、全面的に対立する、裁判員裁判。
裁判員に有利な印象を与えようと、お互いが駆け引きする法廷シーンなどは、面白かったです。

ただ、最初から最後まで、誰に感情移入していいか、わからないまま終わってしまいました。

人の命を奪った被告人を、信じきれない主人公の気持ちは、よくわかります。
その揺れる心情と、裁判の動きは、よく描かれていて、引き込まれるものがありました。

が、香菜のやったことは、裁判を妨害するための、明らかな犯罪です。

父親の悪しき行いを批判しながら、自分の思い通りにならなければ、結局、犯罪行為に走る。
犯人が裁かれるべきと言いつつ、裁判に力を入れるのではなく、弁護士に嫌がらせをする、という思考には、共感しづらかったです。

そんな彼女に接して、揺れる主人公にも共感できず、もやもやしたまま終わってしまいました。

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 【既読の真保裕一作品】
『奪取』
『ホワイトアウト』
『ダイスをころがせ!』
『覇王の番人』
『盗聴』
『誘拐の果実』
『震源』
『奇跡の人』
『発火点』
『真夜中の神話』
『最愛』
『アマルフィ』
『天使の報酬』
『デパートへ行こう!』
『ローカル線で行こう!』
『天魔ゆく空』
『ブルー・ゴールド』
『追伸』
『猫背の虎 動乱始末』
『正義をふりかざす君へ』

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2015.04.15

『闇の華たち』 乙川優三郎

武家社会に生きる人々を描いた、短編集。
「花映る」「男の縁」「悪名」「笹の雪」「面影」「冬の華」の6編。

派手な出来事はなく、何かを抱えた人たちを、淡々と描いています。
やるせない話が多かったですが、「悪名」と「冬の華」がよかったです。

「悪名」。
悪い噂ばかりの男と、茶屋で女中奉公をする女。
お互いの幼いころを知っているからこそ、身近に感じたり、別人になったような気がしたり。
複雑で揺れる心境がうまく、引き込まれました。
珍しく読後感もいい話。

「冬の華」。
蘭方医として、新しい知識でなんとか人々を救おうとする、主人公。
救えない病が多い中、厳しい状況の中、できることをなしていく。
静かながら、力を感じる話でした。

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2015.04.13

『破門』 黒川博行

出資金を持ち逃げした小清水を追う、ヤクザと堅気のコンビ。
ところがそれは、組同士のトラブルにまで発展して……。

第151回直木賞受賞作。

『疫病神』シリーズ第5弾とのことですが、シリーズ未読でも、問題なく楽しめる作品でした。

喧嘩に関しては無類の強さを誇る、ヤクザ桑原。
堅気なのに、ヤクザに振り回され続ける、駄目男の二宮。

キャラがはっきししていますし、ふたりの関西弁の掛け合いが面白かったです。

極道小説なので、暴力シーンがありますし、ふたりには何度も危機が訪れます。
が、本当に二宮の身に危険が及ぶ、という気はしませんでした。

とにかく、桑原の強さが圧倒的で、なんとかなってしまうだろう、という安心感があるんですよね。
二宮自身も、意外とちゃっかりしていますし。

しかも桑原は、単にイケイケなだけじゃなくて、意外と計算高い。
力に任せて猪突猛進するだけの、愚か者はなく、駆け引きのうまさが、また面白かったりします。

ストーリーはハードボイルドですが、主人公コンビが妙にユーモアがあって、クールではなく。
最後まで楽しませてくれる、エンターテイメント作品でした。

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