2015.05.25

『敬語で旅する四人の男』 麻宮ゆり子

仲がよかったわけでも、友達だったわけでもない4人が、ひょんなことから一緒に旅をすることに……。
「敬語で旅する四人の男」「犯人はヤス」「即戦クンの低空飛行」「匡のとおり道」の4編。

第7回小説宝石新人賞受賞作を含む、連作小説。

変わったタイトルに惹かれて、手にしました。

近すぎず、遠すぎず、独特の距離感が、心地よかったです。

新卒ほど子供っぽくもなく、中年というほどおじさんくさくもなく。
少年っぽさを残す大人、という絶妙なキャラクターになれる、年齢設定。

真面目な真島くんの人の好さが、あまり親しくないはずの4人組を、ほのぼのした雰囲気にしてくれます。

回を重ねるにつれ、それぞれの事情も明らかに。
書きようによっては重くなってしまう要素がありながら、どこかのどかな雰囲気を保っていで、楽しく読みました。

やはりキーパーソンは、斉木さん。
発達障害ということなのでしょうが、そういう個性として、自然と存在している。

最後の「匡のとおり道」は、ほほえましく、読後感もさわやかでした。

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2015.05.23

『天に星 地に花』 帚木蓬生

大庄屋の次男として生まれた主人公が、百姓たちの暮らしを見つめながら、自らの道を歩んでいく物語。

ボリュームはありますが、読み応えがありました。

久留米の地名に疎いことに加え、聞きなれない方言のやりとり。
最初は、あまりテンポよくは進めませんでした。

それでも、藩主の横暴に耐え兼ね、立ち上がる百姓たちや、それを見つめる主人公などが、丁寧に描かれ、情景が目に浮かぶようでした。

庄十郎が死の淵をさまよい、医師を目指すあたりからは、ぐっと物語に入り込んでいきます。

生と死に向き合いながら、なんとかしようと奮闘する、庄十郎たちに胸打たれ、何度か涙しました。

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 【既読の帚木蓬生作品】
『ヒトラーの防具』

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2015.05.18

『ウドウロク』 有働由美子

NHK有働アナの、初エッセイ。

面白かったです。

この方のイメージは、「あさイチ」の司会。
毎日見てはいないのですが、短い間でも、イノッチと筆者のコンビの良さは伝わってきます。

アナウンサーらしからぬ、視聴者に近いツッコミ(作中でいうところの"黒ウドウ"発言)には、驚きつつもすがすがしく感じたり。

飾らず、赤裸々に語られた本書は、テレビで見る人柄そのままで、素敵な方だなと改めて感じました。

わき汗が持ちネタ(?)になっているのは知っていましたが、このような経緯だったとは。
そのあたりも含めて、現役NHKアナウンサーとは思えない、ぶっちゃけぶりでした。

アナウンサーとして働き続けることは、並々ならぬ苦労があるでしょう。
紅白歌合戦や、NY時代のできごとなど、その大変さの一端に触れられる内容もあります。

それでも、時にユーモアを交え、時にめげそうになりながらも進んでいく姿に、共感しました。

楽しいだけではなく、その率直な思いに、涙することも。

人柄の魅力に触れられるエッセイでした。

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2015.05.17

『サイドストーリーズ』 ダ・ヴィンチ編集部・編

各作家の、代表的作品の番外編ばかりを集めた、アンソロジー。

ほとんどが既読の本編だったので、どれも楽しめました。
短いながらも、シリーズ世界を浮かび上がらせてくれるので、また本編を読み返したくなります。

逆に、本編を読んでいないと、これ単体では楽しめない気がしました。

一番のお気に入りは、貴志祐介「一服ひろばの謎」。

主人公は、ドラマ「鍵のかかった部屋」オリジナルキャラクターの芹沢豪。
原作にいなかったはずなのに、逆輸入(?)で小説に登場させてしまうという、遊び心がいい。
ストーリーもユーモアがあって楽しかったですし、ドラマの配役で脳内再生されました。

気になったのは、「一服ひろば」の絡め方。

禁煙が当たり前のこのご時世に、軒並み喫煙をプラス方向で描いているのは、不自然に感じました。
JT絡みの企画だから、仕方がないのかもしれませんが。

収録作品は、以下の通り。

・中田永一「鯨と煙の冒険」(『百瀬、こっちを向いて。』番外編)
・貴志祐介「一服ひろばの謎」(「防犯探偵・榎本径」シリーズ番外編)
・宮木あや子「皇帝の宿」(『校閲ガール』番外編)
・東直己「街で立ち止まるとき」(「ススキノ探偵」シリーズ番外編)
・垣根涼介「同窓会」(「君たちに明日はない」シリーズ番外編)
・狗飼恭子「心の距離なんて実際の距離にくらべれば、」(『遠くでずっとそばにいる』番外編)
・中山七里「平和と希望と」(『さよならドビュッシー』番外編)
・笹本稜平「ゴロさんのテラス」(『春を背負って』番外編)
・冲方丁「雁首仲間」(『天地明察』番外編)
・誉田哲也「落としの玲子」(「姫川玲子」シリーズ番外編)
・貫井徳郎「オレンジの水面」(『北天の馬たち』番外編)
・三浦しをん「多田便利軒、探偵業に挑戦する」(「まほろ駅前」シリーズ番外編)

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2015.05.15

『逃亡医』 仙川環

ドナーになる約束を放り出して、行方をくらました男。
患者の容体が悪化し、元刑事の菜月は、その捜索を頼まれるが……。

心臓外科医として立派に仕事をしていながら、どこかつかみどころのない男。
冒頭の謎めいた状況に、引き込まれました。

男の謎は早い段階で明らかになりますし、タイトルから想像するような、医療にまつわる話でもありません。

それでも、男の歩んだ人生を読ませる物語になっていました。

途中の展開の割には、読後感もよかったです。

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