2015.02.26

『銀の砂』 柴田よしき

人気作家・豪徳寺ふじ子の元秘書を辞め、作家として独立した、珠美。
その陰には、苦い過去があった……。

編集者、ふじ子の実の娘、そして数多の男たち。
ふじ子をめぐる、多くの人間が織りなす物語が、面白かったです。

尊敬と軽蔑。
執着と殺意。

表面的には穏やかな、大人のやり取りなのに、ふと垣間見える、複雑な感情に、冷やりとします。
危ういバランスの世界に、引き込まれていきました。

人々の葛藤がリアルなのですが、女性同士のドロドロ、男女のごたごたという、単なる恋愛小説では終わらない、不思議な魅力がありました。

また、後半には、思わせぶりな過去の事件など、ミステリな要素も。

最後まで目の離せないサスペンスでした。

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【既読の柴田よしき作品】
『小袖日記』
『ふたたびの虹』
『竜の涙 ばんざい屋の夜』
『輝跡』
『やってられない月曜日』
『所轄刑事・麻生龍太郎』
『私立探偵・麻生龍太郎』
『謎の転倒犬―石狩くんと(株)魔泉洞』
『フォー・ディア・ライフ』
『夢より短い旅の果て』
『小説こちら葛飾区亀有公園前派出所』
『最後の恋』
『坂木司リクエスト! 和菓子のアンソロジー』

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2015.02.24

『氷海のウラヌス』 赤城毅

太平洋戦争開戦前に、イギリス艦隊と交戦した、日本人がいた。
その生き証人が、今ここにいる……。

最後まで引き込まれる、海洋冒険小説でした。

きたる対米戦争での、ドイツ参戦の確約を得るために企てられた「暁工作」。
人種差別意識の強い艦長を筆頭に、ドイツにはドイツの、日本には日本の思惑があるのです。

最初は、相容れなかったドイツ人と日本人が、心を通わせていく過程に、何度も胸が熱くなりました。

厳しい寒さに加え、敵に制圧されている海域を進む、困難さ。
本来いてはならない、日本人が乗船していることの、問題点。

極めて難しい航海がじっくりと描かれ、ウラヌスのメンバーに感情移入していきます。
時には、涙することも。

方針に賛同できなくても、命令とあらば、軍人としての任務を全うする。
国籍を問わず、海軍軍人たる彼らが、死闘の中で見せたその生きざまに、ぐっときます。

読み応えがありました。

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2015.02.21

『進々堂世界一周 追憶のカシュガル』 島田荘司

京大を目指して浪人中のサトルは、御手洗潔という、医学部生と出会う。
「進々堂ブレンド 1974」「シェフィールドの奇跡」「戻り橋と悲願花」「追憶のカシュガル」の4編。

御手洗潔が登場するものの、いつものシリーズの雰囲気とは違います。
いわゆるミステリではありません。

御手洗を慕うサトルに語る、放浪先で出会った出来事。
淡々とした語り口ながら、さすがの文章力で、すっとそれぞれの世界へと誘われていきました。

土地土地の雰囲気。
差別や、時代による抑圧。

社会派小説のように感じました。

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 【既読の島田荘司作品】
『写楽 閉じた国の幻』
『星籠の海』
Anniversary50』

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2015.02.18

『探偵工女 富岡製糸場の密室』 翔田寛

ある晩、ひとりの工女の死体が発見され、同室の工女が、姿を消した。
間近に迫った、皇太后らの行啓までに、事態を解決できるのか?

新政府はできたものの、まだ不安定な政情。

苦しい家計のために、寄宿しながら働く、工女たち。
人々の暮らしを良くし、東洋一の製糸場にしようと奮闘する、工場長。

健気に頑張る人々がさわやかでしたし、富岡製糸場の歴史的背景や構造、生糸づくりの仕組みについて、よく知ることができました。

ミステリは脇役な印象で、タイトルから想像するような、工女が探偵する謎解きメインの話、ではありません
そこはやや残念でしたが、世界遺産となった、富岡製糸場を描いた物語として、面白く読みました。

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 【既読の翔田寛作品】
『誘拐児』
『無宿島』

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2015.02.16

『下戸は勘定に入れません』 西澤保彦

日付と曜日、酒、そして道連れ。
ある条件を満たすと、過去にタイムスリップしてしまう男の物語。

「あるいは妻の不貞を疑いたい夫の謎」「もしくは尾行してきた転落者の謎」「それでもワインを飲ませた母親の謎」「はたまた魚籠から尻尾が覗く鯛の謎」の4編。

この方お得意の、SF設定ミステリでした。

魅力的なタイトルに惹かれました。

スタートラインとなる、主人公の自殺したがる理由が、いまひとつわからなかったです。
時間をさかのぼっていくので、理由が明かされるのかと思ったら、そうでもなく。
厭世的な性格なのはわかるのですが、自殺するほどなのかな、と。

「こういうルールの世界だから、こういう解釈になります」と、会話がかなり説明的な印象。

タイムスリップの幅が広いので、つい忘れがちですが、現在の時間軸に関しては、短い間の出来事なんですよね。
急転直下の展開でした。

ハッピーエンドでうまくまとまりますが、50歳の冴えない男に、これは正直ないな、と思ってしまいます。

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 【既読の西澤保彦作品】
『腕貫探偵』
『腕貫探偵、残業中』
『モラトリアム・シアター produced by 腕貫探偵』
『神のロジック 人間のマジック』
『からくりがたり』

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